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脳と時間 神経科学と物理学で解き明かす 【本紹介】 脳はタイムマシン

記事の内容

 

時間とは何か?

流れる時間は実在する?それとも錯覚か?

劇的な記憶がスローモーションなのはなぜ?

過去や未来に想いを馳せるのは人間だけか?

 

これら問いにせまれる本を紹介します。

『脳と時間 神経科学と物理学で解き明かす〈時間〉の謎』という本です。

 

 

タイトルのとおり、神経科学、物理学の両方からのバランスの良い解説書になっています。しかし、はやり敵は強大な「時間の本質」です。この本のみで答えがでるわけではありません。それでも、時間という謎に興味がある人にとってのとてもいいガイドになるはずです。いくつもの難解な問いを整理することができるはずです。

 

それでは、本書からいくつかのテーマをまとめます。目次をご覧ください。

 

 

 

時間とは?ざっくりと2つの立場

 

・現在主義

現在のみが実在し、過去も未来も存在しない。私たちの直感と近い。神経科学者もこの考えに近い。

 

・永遠主義

「今」は空間的な「ここ」のこと。時間という次元のあるブロック宇宙に私たちはいる。物理学者はこの考えが多い。

 

 

脳それ自体が時間を空間化している!!人の心は永遠主義的な宇宙に暮らしている。心的には、過去と未来は旅行先なのだ。実際に脳は、心的な時間を伸び縮みさせたりもする。だから、著者は脳をタイムマシンと表現する。

 

本質的時間についての考察は、実際には大半の科学者は気にしていない。一方、時計的時間は絶対的なものでも共通なものでもない。また、主観的時間は心的な構成物であり、上の2つの時間を認識する。

 

本書を読んでも、本質的時間の答えはなかなか見えてこない。

 

 

 

 

 

時間を知っている細胞たち

 

原因があって結果が起こるという時間的なプロセスは、脳の中にも存在する。シナプスだ。ニューロン同士の原因と結果の関係性をシナプスで学ぶ。外の世界を学習するための機能だ。

 

こうした機能に加え、体内には沢山の時計がある。進化の結果、身体には複数の時間を計るメカニズムが備わった。

 

細胞すらも時間を知っている。タンパク質の濃度が振動するのだ。けれど、なぜ細胞は時間を知りたがるのだろうか?光合成の効率をあげるためだ、DNAを紫外線から守るためだ、などの仮説がある。

 

人は体内時計に影響されることはあっても、それを意識することはできない。しかし、人は時間の流れに関して主観的な体験を持てる。命に危機に瀕した時、スローモーションに見える体験をすることがある。ところが、脳内で時間を圧縮したり伸ばしたりすることは、普段からよく行っている。しかし、そもそも時間知覚は錯覚であり、主観的な体験も錯覚である。

 

時間を計る神経回路は特殊なものなのか?いや、数百ミリ秒のスケールでは神経回路の一般的な性質としてみるべきだ。

 

 

 

 

 

意識とは外の世界の遅延付きの記述形態

 

意識と無意識。

意識の時間構造は、実際には、編集された後のリアリティに過ぎない。意識上では、不連続さ、空白が存在してしまう。

 

聴覚への刺激と視覚への刺激にズレがあっても、私たちの無意識はそれを統合してしまう。そしてこの主観的同時性は経験により変化する。

 

時間遡行的解釈

意識は、時間的に編集された世界の解釈だ。

「マウスが壊れた」

「マウスが死んだ」

「マウス」の意味は文の終わりになって初めて確定できるはず。ふだん、私たちはこのことを意識しない。

 

意識とは外の世界の遅延付きの記述形態であり、その遅延は可変でもある。

 

 

 

 

 

タイムマシンとしての脳

 

直感に反するが、過去と未来が現在と同等に実在するという考えは、時間の本質として歓迎されている。しかし、物理学におけるさまざまな時間の役割とは、相容れない点もある。

 

それに、時間に流れがあると私たちが知覚することをブロック宇宙では説明できない。フリーズしたブロック宇宙に私たちが暮らすのならば、なにが進化論上の優位性をもたらすのか?

 

意識という現象そのものに何らかの時間的厚みが必要なのか?

 

著者は、脳の機能を三語で要約している。

脳は、「未来 予期 装置」だ。

脳は時間を知り、時間パターンを生成し、過去を記憶し、時間的前方へと心的に飛んでいく能力がある。すべては未来を予測して準備するためのものだ。ここに進化的優位性があるのだろう。

 

脳には異なるスケールでの異なる計時メカニズムがたくさんある。シナプス、ニューロン、回路などに組み込まれている。脳のどの部分で時間がわかるのかという問いは無効だ。脳の大部分の回路で何らかの形で時間がわかるからだ。

 

・脳は未来を予測するために過去を記憶するマシンである

・脳は時間を知るマシンである

・脳は時間の知覚を生み出すマシンである

・脳の働きによって心的に時間を行き来することができる

 

時間がわかるというのはヒトがあらゆる動物と共有する技能だが、ホモ・サピエンスを特別にしているものは、未来を垣間見て、自らのニーズに見合うように未来を創ることで、自然の気まぐれを超越する能力を身につけたことだ。けれども、心的時間旅行はありがたくもあり呪わしくもある。未来を垣間見ることで、我々の祖先は自力で対処のしようがあること以上を予見してしまったに違いない。避けることのできない、自らの死である。この憂慮すべき予見があってこそ、さらに遠くの未来へと、そして究極の心的時間旅行の発想へといざなわれたのかもしれない。死後の世界の予見である。

p273

 

 

「今」だけが実在する宇宙に暮らしているのか、「今」は「ここ」と同じくらい恣意的なのか。

 

それとも、時間の本質はこのどちらでもないのか。

 

著者はどの可能性も考え、研究を続けていくようだ。

 

 

 

 

 

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