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なぜ科学は完璧ではないのか 科学へのツッコミがある理由 【科学哲学の冒険】

科学へのツッコミがある理由

 

科学をまるっと信じていいの...?

科学を妄執してはいませんか?

 

科学は、絶対的で、信頼性の高いものだ、と思われがちです。しかし、「科学という営み」そのものについては、様々な議論があるのです。その議論を見れば、科学を鵜呑みにするのではなく、科学を科学する、科学を議論することが必要なのだと理解できるはずです。

 

「それは、科学的に正しいからそうなんだよ。」

「神様がそう言っているから、そうなんだよ。」

 

科学を議論するという姿勢が無ければ、この2つの文の論理は、似たようなものになってしまうのではないでしょうか?

 

科学という方法への批判として、大きくは次のような対立構造があります。

 

科学の真理は社会的な構成物だ vs 世界は科学によって正確に捉えられる

 

科学の目的と方法が揺らいでいるため、科学そのものを議論するという「科学哲学」という分野があります。これは現代人にとって必須の教養になるべきではないでしょうか。皆あまりにも科学に対して盲目過ぎます。まるで科学を信仰しているようです。そうならないためにも、科学を見つめ直すということは役に立つはず。

 

とくに10代20代の若者、中高生、大学生は、科学との付き合い方を若いうちに身につけておくことはメリットが大きいと思う。こうした教養こそがあなたを自由にしてくれると思う。

 

 

 

 

科学哲学の冒険 サイエンスの目的と方法をさぐる 戸田山和久

科学哲学の冒険 サイエンスの目的と方法をさぐる (NHKブックス)

科学哲学の冒険 サイエンスの目的と方法をさぐる (NHKブックス)

 

今回紹介するテーマはこちらの本からです。

いくつかのポイントをまとめてみます。

 

 

 

 

 

科学哲学の問題意識

本書の巻末にて、科学哲学の問題とはどういうものなのかがまとめられている。一部を抜き出す。とてもありがたいまとめですね。

 

・科学の方法とは何か。科学はなんでもありなのか。

・科学と非科学、疑似科学を区別する基準はあるか。

・帰納法は正当化できるか。それとも正当化する必要はないのか。

・説明とは何をすることか。法則からの演繹か、原因突き止めか。

・科学理論が説明の役に立つのかなぜか。

・観察は理論から独立しているか。

 

なるほど、科学というものに、様々な議論があることがわかる。まだまだ議論すべきことは多い。そして、今後、これらの答えが出る保証もない。これらテーマを少しでも心にとめて、科学と付き合っていくしかないのだろう。本書では、著者は科学的実在論を擁護する派として論を進めていく。しかし、著者が重視している論点を元にまとめられるが、あくまでもそれらは仮説にすぎない。完璧な答えが出るわけではない。ここが、我々に理性的に考え続けることを要求する哲学らしいところである。だからこそ、知識としても、考える訓練としても、とても勉強になると思う。

 

世界をもっと知りたい!!

それなら、科学だ!いや、けど、科学って案外信用できなそうだぞ...?

けど、人類が編み出した現時点での最適な方法は科学しかないのか...

なら、もっと科学のことを学ぼう!

 

私としては、こんな気分。

 

以下は、気になるテーマの一部をまとめてみたい。さらに深く興味を持てた方は、ぜひこの本を読んでみてほしい。

 

 

 

 

 

 

「電子は実在する」ということの難しさ

 

自然秩序は、社会が自然に投影したものに過ぎない??

 

科学をやる前から、自然秩序は独立に存在したのか??

 

 

 

 

科学的実在論、社会構成主義、反実在論

・独立性テーゼ

人間の認識活動とは独立に、世界の存在と秩序がある

 

・知識テーゼ

人間が科学によって、その秩序について知ることができる

 

・科学的実在論

独立性テーゼと秩序テーゼの両方を認める

科学的実在論は、私たちの素朴な常識に合っている。だから、著者は擁護したいと考えている。

 

・社会構成主義

世界の秩序は科学者の集団的な合意によって、世界に押し付けられると考える。独立性テーゼを拒否する。観念論的。

 

「科学的事実を見出すためには、科学者集団による社会的プロセスが必要

→事実の存在そのものが社会的プロセスの産物である」

 

この推論には、飛躍がある、と著者は指摘している。

 

・反実在論

独立性テーゼを認めるが、知識テーゼを観察不可能な対象だけ拒否する。観察不可能な理論的な対象が、世界の真理を語っているのだとする根拠はない、とする。

 

反実在論者は20階から飛び降りない。ローカルな懐疑、と言える。

 

 

 

 

科学の目的

反実在論者は、世界に正確に対応した真理を見つけることが科学の目的ではないと考える。反実在論の立場では、この目的は果たせないことになるからだ。

 

たとえば、量子力学の基礎的な方程式の解釈については、議論が続いている。しかし、工学上はすでに応用されている。科学の営みはそれでいいのだ、とみなす。

 

我々は世界のどこまで知りうるか、科学の目的は何か、という論争につながっていく。

 

 

 

 

科学的実在論への批判

 

科学的実在論は、科学がこれだけ成功しているのだから、実在論が最良である、と考える。

 

・悲観的帰納法

しかし、実用上成功しているように見える科学理論も、後から間違っていたことが分かることは、歴史上何度もあった。だから、科学の成功と真理の間の関係は、絶対的なものではない。よって実在論が最良の説明である、とは言えない。

 

けれど、やはり「成功」ということの意味が曖昧である。

 

悲観的帰納法では、理論の間違っていた部分がその理論の成功に関わっていることを示さなければならない。よって、「理論の部分」てどゆこと??となってしまう。

 

 

 

 

反実在論への批判

 

・決定不全性

観察データだけからは、特定の一つの理論が正しいとする理由は導けない。

電子の存在を認める理論なのか、それともほかの理論なのか、決められない。

 

反実在論者は、この決定不全性を論拠にしている。

 

まとめると、反実在論には、次のような批判がある。

 

・観察可能なとのと不可能なもののはっきりとした区別はできるのか?

・決定不全性は確かか?恣意的に当てはめていないか?

 

 

 

 

科学理論とは何か?

 

科学理論をさらに考えるために、対象についての実在論と法則についての実在論を分けて考える。対象についての実在論を擁護するために、操作可能性に訴えることができる。観察不能でも、操作できるならば存在するはずだ、と。

 

理論とは、文の集まりのことではない。

 

理論とは、実在システムのモデルである。だから、実在と理論は、類似関係にある。

 

こう考えると、科学の目的を考える必要がある。

 

科学の目的:実在システムによく似たモデルを作ること

 

それでは、科学が実在に近づいていることをどう確かめればいいのか?

 

これを科学で正当化しようとすることは、帰納法を帰納法で正当化しようとすることと等しい。

 

 

 

 

 

 

帰納法へのツッコミ

帰納と演繹、これは耳にしたことがあると思う。この2種類の方法こそが科学を進めていく柱になっている。にもかかわらず、帰納と演繹への批判は大きい。ここでは、帰納を考える。

 

太陽は東から昇るが、明日もそうなる保証はない。「これまでこうなってきたから明日もそうなるとは言えない」のである。つまり、帰納法を経験的に正当化することはできない。帰納を帰納で根拠づけることになり、循環になる。

 

ある推論方法によって、その推論方法自身をどうやって正当化できるというのか。

自分の靴紐を引っ張って自分自身を持ち上げるようなものだ。この例えは、「ゲーデルエッシャーバッハ」に出てくるもので、気にいっている笑。

 

 

 

 

帰納法を援護するために

では、帰納を擁護するためにどこを考えればいいか?まずは、帰納を何に使っているのか分けよう。

 

科学に先立って、科学の方法を決めておこうという考えかたもある。その中で、これから帰納を使っていいか決めるために、帰納を使うのはまずい。循環だからだ。

 

しかし、すでに始まっている科学という探求の中で、その探求方法そのものをチェックするには、これまでの方法(つまり、帰納)を使うしかない。

 

・自然主義の態度

科学に先立って科学を基礎付ける独自の特権的営みとして哲学を捉えるのはやめて、哲学的探求を科学のうちに埋め込まれた、経験的探求の一コマとして考えましょう

 

帰納が使えるような宇宙に、帰納を使う我々が誕生した。我々はどういうわけだか、帰納を使うようにできている、これをまずは認めよう。

 

科学でなぜ世界が理解できるのかという問題への答えも、「我々の科学が通用するような世界に我々がいるからだ」でいい。

 

以上が帰納を援護する考え方だ。これをもとに著者は、科学的実在論を擁護する方に論を進めていく。

 

 

 

さらなる詳細な議論は、ぜひ本書へと進んでみてほしい。

 

 

 

 

 

 

他のおすすめ本を上げておきます。これらもまとめたいですね。

科学哲学への招待 (ちくま学芸文庫)

科学哲学への招待 (ちくま学芸文庫)

 

 

知性の限界――不可測性・不確実性・不可知性 (講談社現代新書)

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