記事の問いと内容
なぜ数学は自然界を説明するのに、これほどまでに効果的なのか?
こんな疑問を感じたことはあるだろうか。そんな人にピッタリの本を紹介したい。
「神は数学者か? 万能な数学について」という本だ。
上記のテーマのもと、数学というものの性質を掘り下げていく。本記事では、いくつかの点をまとめさせてもらう。
数学と人間の関係、数学と自然の関係などなど、とても楽しめる本だと思う。ぜひ目次に目を通してみてほしい。
神は数学者か?
人間の純粋な思考の産物であるはずの数学。
その数学がなぜ、宇宙構造や自然現象、遺伝の法則、株価の挙動など、
現実の世界を説明するのにこれほどまでに役に立つのか?
創造主は数学をもとにこの世界を創ったのか?
ピタゴラスの定理から非ユークリッド幾何学、結び目理論まで数学の発展の歴史を追いながら、
アインシュタインをも悩ませた「数学の不条理な有効性」の謎に迫るポピュラー・サイエンス。
数学は発見か、発明か?
なぜ数学はわれわれの周囲にある世界をこれほど効果的かつ有意義に説明し、新しい知識をも生み出し続けるのか?
数学は発明なのか、発見なのか?
宇宙が数学に支配されている、数学で分析できるように思えるのはなぜか?
数学は人間の心とは独立に存在し、我々はそれを発見するのか?
それとも、数学は人間の発明なのか?
抽象的な数学世界が確かにあらかじめ存在しているのか?
それとも、数学は人間の日常体験から生まれるものなのか?それならば、その数学はどこまで普遍的なのだろう。そして、人間が作り出す数学と、他のもの、絵画や音楽との違いはなんだろう。
こうした、「数学は発見か、発明か?」という問いは、「神は発見か、発明か?」と言い換えてもいい。
「数学の不条理な有効性」
物理理論においても、数学は成功している。
・観測結果に合うように数学理論を応用できること
・純粋な数学理論が、後になって物理学の理論に変身すること
確率や論理
・正規分布
生物学的な人間の個人差さえもが、厳密な数学的法則に従う。
生物の遺伝も、確率という数学に従う。
不確実性すらも、数学的な法則に支配されているように見える。
・論理学
人間の思考からのみによって演繹的に導かれる論理法則、つまり、人間の形式論理と宇宙の関係はどうなのだろう?これらも、宇宙に対する深い洞察をもたらしてくれるのに。
認知科学者の見解
認知科学者
「金槌を持つものには、何もかもが釘に見える」
つまり、数学は人間の発明である。
一定の数学的能力は生まれつき備わっている。
自然数のような基本的な概念でさえ、人間が物質世界の要素を抽象化することによって生み出したと考える数学者もいる。自然数という概念は、人間の経験する宇宙に依存する。
数学は、発見と発明のまぜあわせ
著者の見解はこうだ。発見か、発明かとふたつに分けられるものではない。
一般的な概念は発明。概念同士の関係は発見。
「素数という概念は発明だが、素数にまつわるあらゆる定理は発見である。」
ほかにも、
・数学は人間文化の一部。
・数学理論も、物理世界に合うように淘汰され進化していく
・数学で解決できそうな問題を、選び出し研究してきたのだ
・思っているほど、数学は自然界を表せてはいない。数学が適用できない対象も多い。
などなど、興味深い論点があげられる。
個人的感想
しかし、やはり「数学の不条理な有効性」についての完璧な答えは得られていない。専門家の間でも、結論はでていない。むしろ、専門家であるほど、考察の余地を残している。
自信の立場によってさまざまだが、数学者よりも、認知科学者の知見が説得力を持つように見える。そうなると、やはり数学も人間の心によって作られたものという見方が強いのかもしれない。
そうなると、「人間の心と自然界の関係」というこれまた大きな哲学的な問いにぶつかってしまう。難しい。
「数学とはなんであるのか」を考えるためだからこそ、様々な学問からアプローチするべきなのだろう。この本の著者もそうしている。「意識とは何か?」「宇宙とはなにか?」といった、とんでもない難問が整理されたときこそ、またこの「数学とは何か?」という問いに帰ってくるべきかもしれない。
いずれにせよ、いろいろな学問の横断がポイントになりそう。おもしろい。
より詳しくは本書へ進んでみてほしい。
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