機動戦士ガンダム 逆襲のシャア 感想
逆襲のシャアという作品をやっと見た。ガンダムは好きだったが、平成生まれの私は見れていなかった。
いざ見てみると、作り手の成熟を感じた。
ここに、現在多く溢れているアニメとは違う何かを感じた。
「やっぱり昔の作品っていいな」という印象だけにとどまらないように、この違和感を考察してみたい。
成熟とはなんだろう?
この作品のどんなところが、そう感じさせたのか。
単に古いから、その古さが現代のアニメとは違う印象を与えているだけでは?
つまり、成熟という言葉で、作品の評価を粉飾決算しているのだ。いずれにせよ、私自身のバイアスがかかりまくりな「成熟」ということではある。
ざっくりと言うなら、人間が描けている。キャラの振る舞い、言動、その一つ一つが人間くさい。
利己的ではなく、大義のために命をかけるという生き様。ここがとてもかっこいいのかもしれない。戦争、生き死にというテーマが背景にある分、人間のそういう部分を描きやすいのはあるのだろう。
・わかりやすさを押し殺したような
・ぐっと我慢するような
・それでも現実に向き合う葛藤
言葉にすれば、このような印象だろうか。
続いて、違和感の背景を考察する。
キャラ作りの背景
最近のアニメになんだか足りないことってなんだろう。
扱うテーマの深さ、鋭さ、新しさ、それに伴う理屈や世界観、確かに楽しめる部分もある。けれど、やや感じるのはキャラの魅力が薄いことだ。
なぜだろう?
「キャラ」的すぎるのだと思う。生の「人間」感が足りない。
これこれの要素を詰めておけば、人気が出るだろう、というようなまるでRPGのキャラ作りのような「計算」が前提にある。人間的な香りが薄い。
それぞれのキャラクターたちの役割、見た目などによって性格もカスタマイズされる。その結果、作品ごとに違いがあまり無い。
なんだ、またこんなタイプのキャラなのか、と感じてしまうことが多い。
見るものも、作り手側も、「はっきりとした、わかりやすい」キャラ付けを求めている。なぜそうなったかといえば、その方がマーケティングがしやすいからだ。つまり、資本主義という抗えない流れが、この背景にはあるのかもしれない。
登場人物が、商品になっているのだ....
登場人物とは、人間だ。
人間とは、本来、「商品」とは正反対の存在だったはずなのに...
こうした資本主義と人間について、さらに学びたい方は次の本がお勧めだ。記事でも紹介している。
人間を描いてほしい!!
一言で言うなら、私は、「商品ではなく人間が見たい!!!!」のかもしれない。
自分が望むものだけを見る。この姿勢は、ただの消費者だろう。しかし、未知なる人間と作品を通して出会いたい。
つまり、そもそも他者とは、偶発性に満ちていて、けれどもなんだか引き寄せられるものだと思う。次の記事で詳しく書いている。
計算を間違い、マニュアルを守れず、ふと何かが降りてくる。
それらはすべて知性の賜物である。
生きものの知性である。
今こそ天然知能を解放しよう。
人工知能と対立するのではなく、
意識の向こう側で、想像もつかない「外部」と邂逅するために。
作り手が成熟している
一方、「逆襲のシャア」の登場人物たちは、とても生々しい。もちろん、こちらもキャラであることに間違いはない。
しかし、その言動、振る舞いは、作り手の生の体験、感覚が色濃く生かされているように思う。彼らの振る舞いからは、「なんかわからないけど、勉強になるな、惹きつけられるな」という香りがする。
現在のキャラクターたちのような、マーケティング結果、計算結果のようなものとははっきりと違う。それら性格、キャラからは、商品の匂いがする。
私が感じた違和感を言葉にすれば、このようなものだろう。最近のアニメ作品などに感じていた違和感が、「逆襲のシャア」を見ることで浮かび上がったとおもう。
また、現在の作り手は成熟していない人が多い、と言っていいかどうかは微妙なところだ。成熟しているかいないか、という明確な基準はないし、それを調べる手段もない。根拠がないので、主張にはならないだろう。
作り手の叫び
今回考察したことは、次の記事とも関連が深い。ぜひ読んでみてほしい。
フラストレーションが発散できるような映画には、どうしてもその映画を撮って伝えたいことがあるんだ!!これを表現せずには生きられない!!!といった作り手の「人生をかけた叫び」が詰まっている
セリフの格調
次のようなセリフの数々も、なんだか大人だな、成熟しているな、と感じさせる原因だろう。実際に、シャアの設定年齢を聞いて驚いた人も多いはずだ。それくらい、セリフの格調が高い。
アムロ「貴様!?」
シャア「ギュネイを呼べ」
アムロ「なんでここにいるんだ!?」
シャア「私はおまえと違ってパイロットをやっているだけではない!」
アムロ「なんだと!」
クェス「あれがシャア・・・」
アムロ「俺たちと一緒に戦った男がなんで地球つぶしを!」
シャア「地球に残っている連中は地球を汚染しているだけの、重力に魂を縛られている人々だ!」
クェス(あ、だから夫婦でもいがみあってられるんだ・・)
アムロ「そうかい!・・シャア!なんで・・」
シャア「地球は人間のエゴ全部を飲めこみやしない!」
アムロ「人間の知恵はそんなものだって、乗り越えられる!」
シャア「なら・・・今すぐ愚民ども全てに英知をさずけてみせろ!」
クェス(そうだそれができないから・・・)
アムロ「貴様をやってからそうさせてもらう!」
アムロ「ふざけるな!たかが石ころ1つガンダムで押し出してやる!」 シャア「馬鹿なことはやめろ!」
アムロ「やってみなければわからん!」
シャア「正気か!?」
アムロ「貴様ほど急ぎすぎもしなければ、人類に絶望もしちゃいない!」 シャア「うわぁぁ・・アクシズの落下は始まっているんだぞ!」
アムロ「υガンダムは伊達じゃない!!」
シャア「そうか。しかしこの暖かさをもった人間が地球さえ破壊するんだ。それを解るんだよ!アムロ!」
アムロ「わかっているよ!だから!世界に人の心の光を見せなけりゃならないんだろ!!」
富野節が効いている。
次のような動画で、雰囲気を感じてみてほしい。
【MAD】機動戦士ガンダム 逆襲のシャア Char's Counterattack【AMV】
まとめ
作り手の成熟度が、「商品ぽくない」キャラを描きだしてくれる