経済とはなんなのか なぜこんなにも格差があるのか
経済についてほとんど勉強する機会がないまま、私たちは大人になってしまう。
必要なのは、教科書的な暗記ではなく、生きた知恵だ。
しかし、経済学の専門書は敷居が高い。
今回紹介する本は、経済の本質をわかりやすく教えてくれる話題の本だ。
経済というわけのわからないものを考えるいいヒントを得られるとおもう。
それでは、目次を見てみてほしい。
- 経済とはなんなのか なぜこんなにも格差があるのか
- 父が娘に語る 美しく、深く、壮大で、とんでもなくわかりやすい経済の話
- 経済の始まりは、「余剰」
- 「市場のある社会」と市場社会
- 利益が目的になった すべての富が借金からうまれる
- 銀行は、魔法の力を持つ
- まとめ
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父が娘に語る 美しく、深く、壮大で、とんでもなくわかりやすい経済の話
父が娘に語る 美しく、深く、壮大で、とんでもなくわかりやすい経済の話。
- 作者: ヤニス・バルファキス,関美和
- 出版社/メーカー: ダイヤモンド社
- 発売日: 2019/03/07
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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ブレイディみかこ氏が「近年、最も圧倒された本」と評し、佐藤優氏が「金融工学の真髄、格差問題の本質がこの本を読めばよくわかる」と絶賛、25ヶ国で続々刊行の世界的ベストセラー『父が娘に語る 美しく、深く、壮大で、とんでもなくわかりやすい経済の話。』(ヤニス・バルファキス著、関美和訳)
この本から、いくつかのテーマをまとめてみる。
経済の始まりは、「余剰」
市場と経済は違う。市場は、物を交換することであり、これは昔からあった。それならば、経済はどんな条件がそろって始まったのか?
農耕の発明がスタートだ。農耕は、経済の条件である余剰がうまれた。
農作物の余剰が、人類を永遠に変えるような、偉大な制度を生み出したということ。それが、文字、 債務、通貨、国家、官僚制、軍隊、宗教といったものだ。テクノロジーも、最初の生物化学兵器を使った戦争もまた、もとをたどると余剰から生まれている。
みんなが貝殻(通貨) を信用して、貝殻に価値を認めるようになるには、とても力のある誰かや何かが支払いを保証してくれることを、全員が認識していなければならなかった。たとえば昔なら神託を受けた支配者や、高貴な血筋の王様や、そのあとになると国家や政府が保証してくれることが必要だった。
・文字は余剰を記録するためのものだった。
・余剰を記録するために、債務(借金)と通貨という概念が生まれた。
経済について語るとはつまり、余剰によって社会に生まれる、債務と通貨と信用と国家の複雑な関係について語ることだ。
・余剰がなければ、国家すら生まれなかった。
・支配者たちにとって都合のいいように余剰が偏ることを正当化するために、宗教も生まれた。支配を裏付けるための「思想」が形成された。
「市場のある社会」と市場社会
・交換価値 現在のようなあらゆる商品のこと
・経験価値 交換不可能な体験や気持ちなど
市場のある社会、つまり、市場以外の部分も機能していた社会では、交換価値ではなく、経験価値にも重きを置かれていた。それでは、「市場のある社会」はどのように市場社会になったのか?
クロ―バル市場に対抗するために行われた「囲い込み」が残酷で強力だった。人々から、代々受け継いできた土地と仕事をうばった。
そして、生産の3要素が商品になってしまった。
・道具や建物、生産手段。
・土地
・労働者
市場を通して交換されるようになってしまった。苦役を商品にするしかなくなった。これが、交換価値が経験価値を上回る結果につながった。
筆者はこの現状を嘆いている。
世の中のすべてを交換価値でしか測れない経済学者こそ、まさに皮肉屋だ。彼らは経験の価値を軽んじ、あらゆるものは市場の基準で判断されると思っている。
そして、この変化は、お金が目的の社会へつながる。
利益が目的になった すべての富が借金からうまれる
土地と仕事を奪われる。そうすると、みなが新興の起業家のような立場に置かれてしまった。新しい仕事をするには、生産の前に借金が必要になる。だから、借金をかえすために、利益をあげることが最優先になる。
借金が生産プロセスに欠かせない潤滑油になったのだ。利益自体が目的になったのも、このときだった。利益が出なければ、新しい起業家たちは生き延びることができないからだ。
・先に借金ありきで、生産をしなければいけなくなった。
・借金するということが、経済を回すようになった。
・産業革命の原動力は、借金。
・借金することが認められる風土は、プロテスタントの台頭と関係がある。
銀行は、魔法の力を持つ
・起業家はタイムトラベラー。未来から無限の交換価値をつかみとる
・銀行はツアーガイド
起業家に可能性があるのなら、リスクを踏まえつつも、お金を貸し出す。
銀行は、現在の交換価値を貸すわけではない。「現在」という縛りがないので、いくらでもおカネを貸すことができる。キーボードを何度か叩くだけでいい。より多くの人に、より多くのおカネを貸すことで、経済に回るおカネは多くなり、銀行の懐も潤う。
そのお金はどこから来るのか?
「どこからともなく、パッと出す」
ただ、操作するだけだ。パソコンにその金額分を打ち込むだけだ。
魔法のようだ、、、、
もちろん、未来を読み間違えて時空が歪むという落とし穴がある。
ある時点で、利益を出しても借金の方が多くなる、という状況も考えられる。
大量倒産、大量失業につながる。
そんなピンチの金融機関を助ける存在がある。
そう、中央銀行だ。
しかし、中央銀行はどこから金を持ってくるのか??
「どこからともなく、パッと出す」
この、パッと金を生み出すというのは、現代の話だけではない。
当時もいまも重要なのは、貝殻に刻まれた数字や、口座残高の数字を、人々が信用できるかどうかだ。土地の生産性を高め、国家を豊かに安定させ続けることで、作物は約束通りに分配されるし、通貨は信頼に値すると示すことだ。国家の新しい(ようでそうでもない) 役割と言ったのは、そういう意味だ。
このようにお金を簡単に作り出せてしまう。
もちろんリスクはあるが、そのリスクすら無効化するような政策を銀行は持っている。
だから、超格差社会に繋がるのだ。
まとめ
上でまとめたのは、本当に一部だ。ぜひ、本を読んでみてほしい。
なぜこんなに格差があるのか
市場社会とは何か
すべての富は借金から生まれる
お金が生まれては消えるという黒魔術
労働力とマネーの違い
誰にも管理されないお金、ビットコインの問題点
経済と環境
などなど、本質的な議論をこの本では楽しめる。とても勉強になること間違いなしだ。
最後に、経済の仕組みを知り、精神を自由にするために、著者はこういう。
「自分の身の回りで、そしてはるか遠い世界で、誰が誰に何をしているか?」
この問いを考え続けるべきだ、と。
こちらのリンクから、読める部分もある。
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