記事の内容
今回の記事では、「圏論の道案内」という本を紹介する。
皆さんは、圏論という数学を聞いたことはあるだろうか?
圏論ってどこか面白そうだぞという人に、さらに興味を持ってもらえるような記事にしたい。
初心者でも、抽象的な圏論の世界の香りを感じることができるはずだ。
記事では、案内としてこの本のポイントを紹介したい。それでは、目次をどうぞ。
圏論の道案内 矢印で描く数学の世界 西郷甲矢人
圏論は最近人気がある数学の分野の1つで,その考え方はプログラミング,人工知能,物理など幅広い分野に応用されています。本書はそんな圏論を一から知りたい人に,圏論とは何かをわかりやすく解説していきます。異なるものをどうやってつなげて矢印を引き,同じようなものとして見立てていくか,その過程をじっくり味わってみてください。自ずと,圏論とはそういうことだったのか,とお分かりいただけるはずです。
圏論のイメージと本質
圏論とは、一体どういう考え方なのか、そのキモを本書からまとめたい。もちろん、ざっくりと抽象的な言い方になる。
圏論とは「異なるものの間の同じさ」をシステマティックに扱う数学的な枠組み
数学についての数学、ともいえる。
さらに、私たちが普段するあらゆる思考は「異なるものの間の同じさ」を扱うものだ。だからこそ、圏論は「ありとあらゆる思考の結節点」となるに違いない、と著者は期待している。
圏とは、「合成可能な矢印のシステム」。
あらゆる人間の思考様式や、あらゆる学問は、合成可能な矢印のシステムと見立てることができる。
圏を考えるメリットを二つ、著者は強調している。
・さまざまな現象を「動的な矢印のシステム」として捉えるための普遍的な枠組みを与える
・「異なるものの間の同じさ」を捉える普遍的な枠組みを与える→「同型」の概念を定義できる
異なる学問の間に、共通の構造が見出されたならば、有効なアナロジーになる。
さらに、それらのアナロジーの間のアナロジーも考えることができる。どんどん、抽象度が上がっていく。
アナロジーに対応するのが「関手」であり、アナロジーのアナロジーに対応するのが「自然変換」である。
この自然変換の重要性を著者は強調している。
この自然変換こそ、これまでは定式化されていなかった概念をあぶり出すものだ!!!と。
そして、圏論の特徴こそ、自然変換の理解にかかっている、と。圏論入門者は、この自然変換の重要性に気がつかぬまま、勉強を進めていることが多い。本書でこうして、自然変換のすごさを繰り返し強調してくれているのは、ありがたいと思う。
ここまで聞いただけで、個人的にはワクワクする。「同じさ」や「構造」といったすんごい抽象的なものを明瞭に扱えるようになるのだ。そうした圏論という言語を手に入れた後の世界認識は、 どうなるだろうか?
圏論面白そう
圏論に興味を持ったきっかけは、2つある。関数型言語Haskellを触った際に、どうやら圏論という数字と関係があることを知った。プログラミング言語の背景にある理念として、どんな特徴が圏論にはあるのかと気になった。
本書でも、後半では圏論とモナドの関係を扱っている。これは、Haskellユーザーでモナドをもっと理解したいという人には嬉しいだろう。重くなりすぎずに、雰囲気がわかるはずだ。
また、私は論理学、数理論理学にずっと興味を持って勉強していた。そんな中、それらに関係の深い抽象的な言語として圏論というものの存在に行き着いた。とくに、『圏論による論理学 高階論理とトポス』という本の存在を知り、いつか理解したいと思っていた。
圏論というものの情報が耳に入るにつれて、その抽象度の高さが気になっていた。抽象的な構造を記述することができる「言語」としての側面に惹かれていたのだと思う。つまり、哲学や、その他あらゆる学問の底にある何かにアクセスできるのではないかという期待を持っていた。
とはいえ、本格的な圏論の数学の本では、歯が立たないと思う。そんな自分にとって、このような入門書はありがたい。
この記事が、私のような入門者の助けになれば嬉しい。
おすすめ記事・本
興味を持った人は、ぜひ本書へ進んで見て欲しい。
本書の次には、圏論に関する幅広い題材を扱っている次の本が面白そうだ。
さらに、本格的に圏論を数学として勉強したいなら次の本がいいらしい。他の教科書に比べたら、まだ入門者には優しい。