記事の内容
「経済の専門用語はなんだかわからん。」
「分かったような気になっている。」
日常の事なはずなのに、経済を議論することはなんだか難しい。
そんな人にピッタリの本を紹介します。
『お金のむこうに人がいる』という本です。
お金の流れを中心とした経済学ではなく、その本質である人の労働に注目した本です。労働から経済を見ることによって、実体がわかりやすくなります。
本書の最も大切なメッセージはこうです。
「誰が働いて、誰が幸せになるのか」を考えることが重要。
この記事では、本書からいくつかのテーマに絞ってまとめてみます。
それでは、目次をどうぞ。
- 記事の内容
- お金のむこうに人がいる 田内学
- なぜお金をコピーしてはいけないのか?
- 日本全体にあるお金の量は120兆円なのに、日本全体の預金残高は1200兆円もあるのはなぜ??
- お金にできるのは「困る人を変えること」だけ
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お金のむこうに人がいる 田内学
経済とは「誰が、誰を幸せにしているか?」を考えること。お金を取っ払って「人」を見れば、とたんに経済はシンプルになる。一度に数千億円を動かしてきた元ゴールドマン・サックス金利トレーダーが「経済の原点」から徹底的に考えた、予備知識のいらない経済新入門。
なぜお金をコピーしてはいけないのか?
日本中の人が貨幣を使い始めた理由は?
そもそも、貨幣が流通した理由はなんだろう。
貨幣が流通した理由は、税を納めるためだ。
税を払わないと捕まってしまう。国家という暴力だ。
だから、人々は貨幣を手に入れるために働く必要が生じた。これが、個人にとって貨幣の価値が生まれた理由だ、と本書は言う。
お金=○○してもらえるチケット
私たちが消費しているのは、お金ではなく、誰かの労働だ。
お金の本質は、誰かに将来働いてもらえることだ。
つまり、働く人がいなければ、お金の力は消える。
まさに、本書のタイトル通りである。お金の向こうに人がいる。
現代では、この本質が見えにくくなっている。労働が細分化されすぎたせいだ。
金さえあれば何でもできると思ってしまう。
お金があっても働いてくれる人がいなければなにもできない。
経済の流れをきちんとつかむには、お金の本質である人々の労働に注目する必要がある。あらゆる経済政策について議論するためにも、このセンターピンを外してはいけない。
お金のむこうに人がいる、という事実を無視すれば、経済の動きを判断する基準が狂ってしまう。
なぜお金をコピーしてはいけないのか?
お金をコピーできるならば、手に入れるために働く必要はなくなる。
すると、みんながみんなのために働くという行為がなくなってしまう。
みんなが支えあって生きていく生きていけなくなる。
これが、お金をコピーしてはいけない理由だ。
日本全体にあるお金の量は120兆円なのに、日本全体の預金残高は1200兆円もあるのはなぜ??
結論を言う。
貸し借りの分だけ、実際に存在している現金の総量よりも増えている。
あなたの給料の額が増えても、社会全体にあるお金の量が増えるわけではない。
会社が持っていたお金から、あなたの個人口座にお金が移動しただけだからだ。
ここまでは、分かりやすい話だろう。
しかし、日本全体の預金は増え続けている。
このニュースを聞いたことがある人も多いのではないか。
実際に、日本全体に流通しているお金の合計は120兆円ほどなのに、預金残高は1200兆円もあるという。
なぜこんなに開きがあるのか?
不思議だ。
どういうからくりだろう?
銀行には、預金残高を減らさずに、金庫の現金を外にだす方法がある。
貸付だ。
車を買うときに、現金を引き出すのではなく300万のローンを組む。
その300万円は、自動車会社の預金口座に移動する。
これにて、銀行内の現金量は変わらないのに、日本全体で300万円分預金が増えた。
このように、
銀行が預金残高を増やすには、誰かに借金をしてもらうしかない。
貸付と預け入れの繰り返しにより、120兆円しかないはずの現金が、1200兆円以上の預金を作り出した。
このカラクリがわかると、預金がある分だけ借金があるということがわかる。
先ほどの例でいうならば、車を買った人にとっては300万円分の借金があるということだ。
預金の裏側には借金がある。
預金大国は、借金大国のことなのだ。
貸し借りが増えているだけで、お金自体増えているわけではない。
お金は増減せず移動する。
社会全体のお金は増えない理由、預金=借金のからくり、少しでも興味を持ってもらえたなら嬉しいです。
お金にできるのは「困る人を変えること」だけ
お金にできることは、労働の分配とモノの分配でしかない。
労働不足もモノ不足も、お金では解決できない。
この観点から、年金問題の根本も明快になる。
労働不足だ。
現役世代が減少し、生産力が減っているせいだ。
政府がお金をだせば解決するだろうか?
いや、しない。
政府は、困る人を変えることしかできない。若者世代の負担が増えることは、年金問題の解決にはならない。
社会全体の問題は、お金で解決できない。
お金で解決できそうな気がするのは、「私たち」という主語の範囲が狭いからだ。
私たちの外側に、問題のしわ寄せがいっている。
お金の向こうにいる、実際に働いてくれる誰かが、問題を解決してくれているのだ。
ここを忘れてはならない。
現代人は、お金が問題を解決してくれる、という錯覚にとらわれすぎている。
誰が働いて、だれが幸せになるのか、という当たり前のことを考える。
経済を直感的に感じることができるはずだ。
さらに、わかりやすくてためになるテーマが本書には詰まっている。
ぜひ読んでみてほしい。
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