記事の内容
この記事では、量子力学を学ぶための入門書を紹介します。
量子力学では、「スピン」という概念が登場します。
とくに、「シュテルン=ゲルラッハの実験」という、とても面白く重要な実験にて、スピンという概念に触れることになります。
この概念をもっと知りたい、そんな思いから今回紹介する本を手に取りました。
それでは、目次をどうぞ。
量子の世界をみる方法 「スピン」とは何か
電子の「スピン」といわれたときに、皆さんはどんなイメージを持ちますか?
「地球が自転をしながら太陽のまわりを回るように、電子が自転しながら原子核のまわりを回っているようなイメージ」や「電子がコマのように回っている」「フィギュアスケートの選手のように回っている」などのイメージが頭に浮かんでいるのではないでしょうか?
実は、この答えは正しくないのです、といったら皆さんは驚くでしょうか。
「スピン」は私たちの暮らしているマクロな世界の「回転」とは異なり、なかなか感覚的に掴みにくく、それが「スピン」への理解を難しくしているのではないかと思います。
本書は、「スピン」をもっと深く、そして正しく理解してほしいという思いから、物理学者とサイエンス分野の広報関係者、そして素人!? がチームを組んで執筆しました。
この本は、多様な読者を想定したものです。物理に興味のある高校生から「スピン」をきちんと理解したい大学生。学生時代に量子力学の授業で「スピン」の話を聞いたことがあるけど、もう一度、きちんと理解したいと思っている方などなど。さまざまな人に本書をとおして「スピン」の不思議さやおもしろさ、凄さを知ってもらいたいと考えています。
「スピン」の正体とは? 量子力学の誕生からスピンの発見までの歴史的な背景。さらに「スピン」はどのように記述され、捉えればいいのか? 本書では、できるだけ具体的に理解できるように「シュテルン=ゲルラッハの実験」を紹介しながら解説していきます。
さらに、電子だけでなく、陽子、素粒子のスピンまでを取り上げ「量子」の世界をみていきましょう。
そして、2022年度のノーベル物理学賞の受賞でニュースでも話題になっている「量子もつれ」を利用する量子コンピューターや生き物の特殊な能力について、そのほかにも超電導や永久磁石など社会の様相さえ劇的に変えつつあるスピンを利用した技術最先端までをていねいに解説していきます。
本書を片手に「量子」と呼ばれる摩訶不思議な世界に飛び込み、「スピン」をめぐる冒険に出かけましょう。
スピンと聞いたら、回転なイメージが浮かんでしまう。
もっといい名前がなかったのだろうか?
もっと勉強が進めば、「スピン」てぴったりな名前じゃん、となるのだろうか...笑
シュテルン=ゲルラッハの実験について
量子力学を学ぶならぜひイメージを持っておきたい実験です。
この実験については、この動画がおすすめです。
以下の要約では、SG実験と略しています。
スピンとは何か?基礎を要約
・スピンは量子だけがもつ物理量。
・スピンはどんな量か
・スピンの状態とは何か
・スピンの状態を測定するとはどういうことか
・磁気モーメント
磁石の強さを表す量。大きさと向きをもつベクトル。「磁場の影響を受けることによって、エネルギーを生じることのできる物理量」
・電気における「電荷」のように、磁気における「磁荷」は存在しない。
・電子がぐるぐる回ると、磁気モーメントがうまれる
電子が軌道運動をすると、その運動にともなう角運動量に比例した磁気モーメントが生じる。
・SG実験から、電子の運動からではなく、電子そのものが磁気モーメントをもっていることがわかる
電子の軌道運動から生じる磁気モーメントはゼロな状況なのに、磁場の影響を受けている。よって、電子そのものが未知の磁気モーメントを持っていることになる。スピン磁気モーメントとよぶ。この磁気モーメントの値は2つだけ。
・SG実験で、Z軸方向の上下対称な二つの位置にのみ観測された理由
電子において、スピン角運動量のZ成分の値は、二つの値のみをもつから。
・スピン角運動量のX,Y,Z成分はそれぞれを同時に決定できないことが、SG実験で確かめられる。
別の本になるが、量子力学の専門書から重要な言明を引用しておきたい。
量子力学における非実在生関係はもっとシビアなものであり、一つの物理量の値を測定しているときは、それと非可換な物理量の値があるとは思ってはいけないというレベルなのである。p99
量子力学10講 谷村省吾
関連記事