記事の内容
この記事では量子力学、量子計算を楽しむための本を紹介します。
一般向けの読み物から教科書まで学びになるものをまとめています。
量子力学、本当に面白いテーマですよね。
世界の根底に関わる科学であるとともに、最先端なために哲学的な解釈・考察にも溢れている。さらに、量子コンピュータという応用の進歩も気になります。
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それでは目次をどうぞ。
量子力学読み物
「量子論」を楽しむ本 佐藤勝彦
読み物としては十分。量子論始めての人におすすめしたい。今となっては、やや古い本。今では、もっと入門書があるかもしれない。
著者のこちらの本もとても面白かった記憶。
量子とはなんだろう 松浦壮
とてもおすすめ。
量子論のわかりにくいところから逃げない。
逃げずに、混乱の原因をとても丁寧に説明しようとしている。
概念の言語化が丁寧でありがたい。科学哲学の本を読んでいる気がしてくるほど。
踏み込んだ説明があるので量子力学の中級者にもおすすめしたい。
ふと思ったのだが、量子力学の専門家と科学哲学の専門家がタッグを汲んで、量子論の入門書を書いてほしい。
ですが、やはりこれは錯覚なのです。「位置」や「速度」のような概念は、あくまで観測・測定した物事を表現するために人間が発明した「人間にとって便利な自然界の表現」にすぎません。そこには、五感という測定装置が持っている測定限界が色濃く反映されています。
科学とは説明体系であり、その目的は測定された現象を合理的に説明することです。五感による測定結果を合理的に説明できる以上、やはり古典物理学の体系は正しいのです。ですが、それでもなお、「位置」や「速度」が人間の都合で導入された概念であることを忘れてはいけません。位置や速度の概念を大前提として構築された古典物理学が測定結果を正しく説明するからこそ、位置や速度という概念も正当化されているのです。
長らく説明体系の土台をなしていた位置や速度という概念が、物事の理解や測定技術の向上に伴ってついにその役割を果たせなくなった、というだけのことです。五感と直結した概念が便利に使えていた時代が終わり、自然界を表現するための言葉をアップデートしなければいけなくなったのです
一体何が問題なのか落ち着いて考えてみましょう。不確定性関係を額面通り捉えると、「値が確定していない位置や速度」という妙な概念を示唆します。ところが残念なことに、私たちが使う言語にはそのような概念をピタッと表す語彙がありませんし、それに対応する経験的な風景もありません。
量子の世界をみる方法 「スピン」とは何か
シュテルンゲルラッハの実験で注目することになる「スピン」という概念。スピンをもっと知りたい、という方にちょうどいい読み物です。
量子論はなぜわかりにくいのか
これもいい一冊。
量子論のイメージを丁寧に具体化してくれる。
量子論がちょっとわかってきたときに読むと、より深い理解が得られるはず。
ぜひ欲張って、同じ著者の次の本も合わせて読んでほしい。
光の場、電子の海
タイトルから美しい。
場の量子論の入門書。
まだまだ私には難しかった。
量子力学の多世界解釈
多世界解釈についてきちんと勉強したいならこちら。
世界は「関係」でできている
量子論の関係論的解釈。
とても面白い。
量子と情報
存在論と認識論をまたぐ量子力学の展開と、超情報化社会のテクノロジーが出会う、驚異の交差点! 量子コンピュータや量子暗号の技術的イノベーション、そしてそれらのアイディアを生み出し、 また、そのようなアイディアに触発されて進展しつつある量子力学の新しい姿とは?
「小澤の不等式」で有名な著者。
教養としての量子物理
おすすめ!
日本語がやや読みにくいところがあるものの、一般向けなのにごまかしていない。
実験の結果を丁寧に紹介し、量子論の基本的な態度のイメージをできるだけ正確に教えてくれる。
扱う題材が幅広いのも見事。
QBism:量子×ベイズ――量子情報時代の新解釈
QBism(Quantum Bayesianism=量子ベイズ主義、「QBイズム」、「Qビズム」とも)は、量子力学に現れる確率を「ベイズ主義的」に解釈する。すると「波動関数」や「観測者」は新たな意味を帯び、長年のパラドックスにも新しい光があたる。
・量子力学をベイズ主義的に解釈するとはどういうことか?
・それによって量子の奇妙さはどう解消されるのか?
・QBismは科学的世界観にどんな変更をもたらすのか?
この解釈に出会うまで、自身もまた「量子の奇妙なところ」に悩んできた理論物理学者が、「量子」「ベイズ」そして「QBism」の世界を案内する。
色々と批判が多い気がする、ベイズ解釈。
量子力学 教科書
量子力学10講
書き方、展開がわかりやすい。
数式のレベルも、一冊目にちょうどいい。
入門 現代の量子力学 量子情報・量子測定を中心として
圧縮して書かれているので丁寧に読む必要があり。
しかし、とても刺激的。
量子力学は観測に関する情報理論である、と言い切っているところが良い。
まさに、物理学、この世界の根本イメージを変換させてくれる。
現代の量子力学 JJサクライ
名著。
量子力学を学ぶための数学入門
結構おすすめ。
必要な数学的道具を効率よく学べる。
なるほど量子力学 村上雅人
このシリーズはとにかく読みやすい。
数式の飛躍がほぼなし。
量子力学をざっと掴みたい、という人にピッタリがもしれない。
現代量子力学入門 井田大輔
1. 複素ユークリッド・ベクトル空間
2. オブザーバブルの測定
3. ヒルベルト空間
4. 状態決定
5. エンタングルメント
6. 混合状態
7. スピン
8. 対称性
9. グリーソンの定理
10. スピン・統計定理
11. 隠れた変数理論
12. 多世界解釈
13. 量子コンピューター
扱う題材がとても興味深い。
量子力学がわかってきた人向け。
わたしもまだちゃんと読めていないので、時間をかけて取り組みたい。。。。
量子計算
量子コンピュータが本当にわかる! ― 第一線開発者がやさしく明かすしくみと可能性
量子コンピュータの正しい理解のために。
一冊目ならこちら。
量子コンピュータの頭の中
量子計算理論 量子コンピュータの原理
第1章 はじめに
1.1 量子論とは
1.2 本書の内容
1.3 量子論の慣習:ブラケット記法
第2章 古典計算:ベクトルと演算子による表現
2.1 決定的古典計算
2.2 確率的古典計算
第3章 量子計算(基礎)
3.1 古典計算の拡張としての量子計算
3.2 複素数を実数にする
3.3 計算パスの対消滅
3.4 拡張チャーチチューリングのテーゼと量子計算
第4章 量子計算(発展)
4.1 量子ゲートの例と量子回路
4.2 ユニバーサルな量子ゲートセット
4.3 クリフォード演算子, Gottesman-Knillの定理
4.4 混合状態
4.5 一般の量子測定: Kraus演算子, POVM
4.6 量子状態の間の距離
第5章 測定型量子計算
5.1 測定型量子計算における計算の進め方
5.2 グラフ状態
5.3 グラフ状態上での測定型量子計算
5.4 ハイパーグラフ状態
第6章 計算量理論の基礎
6.1 判定問題
6.2 P, BPP
6.3 NP
6.4 非決定性チューリングマシン
6.5 BQP, NQP
6.6 SBP, SBQP
第7章 状態の検証
7.1 グラフ状態の検証
7.2 一般の状態の検証
7.3 例:ハイパーグラフ状態の検証
7.4 基底状態の検証
7.5 例:表面符号ハミルトニアンの基底状態の検証
7.6 例:検証できないハミルトニアンの基底状態
7.7 セキュアクラウド量子計算への応用
第8章 量子対話型証明系
8.1 MA
8.2 IP
8.3 QMA
8.4 Marriott-Watrousの方法
8.5 group non-membership問題
8.6 subset state witness
8.7 クリフォードゲートのみの検証者
8.8 1量子ビットずつシーケンシャルに測定できる検証者
8.9 対話型証明系における乱数の役割
8.10 local Hamiltonian問題
8.11 QCMA
8.12 QMA(2)
8.13 QIP
8.14 QIP完全問題の例1: close images
8.15 QIP完全問題の例2: quantum circuit distinguishability
8.16 QMAM
8.17 QIP=QIP(3) の証明
第9章 超量子計算
9.1 モチベーション
9.2 #P関数, GapP関数
9.3 GapP関数と量子計算の関係
9.4 PP
9.5 postBQP
9.6 postBPP
9.7 postBQP, postBPPのKuperbergによる別定義
9.8 AWPP
9.9 レジスターの都合のよい削除
9.10 CTC
9.11 超量子的過程で生成された状態の検証
第10章 非ユニバーサル量子計算
10.1 サンプリング問題
10.2 深さ4の量子回路
10.3 IQP
10.4 IQPの乗的エラー古典サンプル不可能性
10.5 IQPのL1ノルムエラー古典サンプル不可能性
10.6 IQPの出力確率分布の計算
10.7 DQC1
10.8 DQC13の乗的エラー古典サンプル不可能性
10.9 DQC11の乗的エラー古典サンプル不可能性
10.10 DQC1の出力確率分布の計算
10.11 Kuperberg条件によるpostBQPの定義のDQC1化
10.12 DQC1のL1ノルムエラー古典サンプル不可能性
10.13 one-clean qubitがクリーンでない場合
量子コンピュータが人工知能を加速する
量子情報科学入門 第2版
「量子情報科学」とは、ミクロな世界の基礎物理理論である「量子力学」に基づいて構成される情報科学であり、テレポーテーションや、絶対盗聴されない暗号、また超高速コンピュータなど、夢のような技術を実現する可能性を秘めている。物理学、情報科学、数学、さらには科学哲学などの多様な分野が融合し、発展している最先端の科学分野である。本書は量子情報科学を本格的に学ぶための最適な入門書であり、量子力学の基礎から始まり、量子回路、量子アルゴリズム、量子系の情報量、量子エンタングルメント、量子通信路符号化、量子誤り訂正、量子暗号といった主要テーマを網羅している。この分野の最適な定式化や応用について丁寧に解説されており、初学者から専門家まで幅広く学べる内容となっている。
第2版にあたり、より内容を充実させ、初学者のつまずきやすい点や理解しにくい部分に丁寧な解説を加え、内容を見直した。また、近年の量子アルゴリズムの発展に伴う記述の変更なども取り入れている。
量子情報の基礎的な入門書!!
デモクリトスと量子計算
第1章 原子と空間
第2章 集合
第3章 ゲーデル、チューリング、その仲間たち
第4章 心と機械
第5章 原始計算複雑性
第6章 P、NP、その仲間たち
第7章 ランダムネス
第8章 暗号
第9章 量子
第10章 量子計算
第11章 ペンローズ
第12章 デコヒーレンスと隠れた変数
第13章 証明
第14章 量子状態はどれほど大きいか
第15章 量子計算に対する懐疑論
第16章 学習
第17章 対話型証明、回路下界、その他
第18章 人間原理で遊ぶ
第19章 自由意志
第20章 タイムトラベル
第21章 宇宙論と計算複雑性
第22章 質問タイム
だいぶカオスな本!!
基礎知識を仕入れてから読むとたくさん遊べる。
9 量子
- 量子力学とは、情報、確率、観測量、そしてそれらの関連性についての理論である。
- 負の値を持つ確率論から必然的に導かれるのが量子力学。
現代思想 量子コンピュータ
【討議】
量子をめぐるエコシステム/ 江間有沙+藤井啓祐
【量子コンピュータ入門】
量子コンピュータ開発の現在と応用可能性について/ 根本香絵
量子コンピュータの原理と優位性/ 竹内勇貴
量子計算を哲学してみる/ 細谷曉夫
或る理論計算機科学の研究者から見た量子コンピュータ研究の歴史/ 西村治道
【歴史のなかの量子コンピュータ】
hのない量子力学――機器がつくる世界/ 佐藤文隆
【拡張する量子の科学】
情報の観点からみた量子力学/ 北島雄一郎
圏・量子情報・ビッグデータの哲学――情報物理学と量子認知科学から圏論的形而上学と量子AIネイティブまで/ 丸山善宏
量子と生命/ 田中成典
「わたし」に向かって一般化される量子コンピューティング/ 郡司ペギオ幸夫
【量子がひらくパンセ】
量子力学と現代の思潮/ 全卓樹
無時間、無空間からの出発/ 内井惣七
量子力学・情報科学・社会システム論――量子情報科学の思想的地平/ 大黒岳彦
【AI・暗号・ネットワーク】
未来技術の倫理/ 河島茂生
デジタル署名、ブロックチェーンと量子アルゴリズム――新たなるサイファーパンクの夜明け/ 斉藤賢爾
チャイバースペース(Chyberspace)の出現について――中国の「サイバー主権」論の背景にあるもの/ 羽根次郎
【〈情報〉はどこからきて、どこへゆくのか】
情報概念の形成――一九二〇年代における物理学と工学の接近/ 河西棟馬
ホームオートメーション再考――一九八〇年代の日本が描いた二一世紀の情報化社会/ 鈴木真奈
【クォンタムな想像力】
偶然性・平行世界・この私――量子力学と文学をめぐる諸問題/ 加藤夢三
量子計算について 気になる話題
MIP* = RE定理について(AIで要約したものなので正確性にはご注意を)
MIP* = RE定理は、計算複雑性理論と量子情報理論の交差点に位置する重要な結果です。この定理は、複数の量子証明者が絡む対話型証明システム(MIP*)の計算能力が、再帰的可算言語(RE)のクラスと一致することを示しています。以下に、この定理の内容、背景、証明、および意義について詳述します。
内容
MIP* = RE定理は、次のことを示しています:
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MIP*クラス:複数の量子証明者が絡む対話型証明システムで決定できる言語のクラス。
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REクラス:再帰的可算言語、すなわち停止問題を含む全ての問題を含むクラス。
この定理は、MIP*クラスがREクラスと等しいことを示しています。具体的には、任意の再帰的可算言語は、古典的な多項式時間検証者が複数の量子証明者と対話することで検証可能であることを意味します124。
背景
この結果は、量子情報理論と計算複雑性理論の長年の研究に基づいています。特に、以下のような背景があります:
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対話型証明システム(IP):古典的な対話型証明システムでは、全能の証明者と多項式時間検証者が対話し、問題を解決します。
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多重証明者対話型証明システム(MIP):複数の非通信証明者が絡むシステムであり、その計算能力はNEXP(非決定性指数時間)に等しいことが知られています。
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量子もつれ:量子もつれを共有する複数の証明者が絡む場合、その計算能力がどれほど強力になるかという問題が研究されてきました。
証明
この定理の証明は非常に技術的であり、以下の主要なステップを含みます:
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量子低次数テスト:NatarajanとVidickによる量子低次数テストを用いて、特定の分布を自己検査する技術。
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圧縮手法:Fitzsimonsらによる再帰的圧縮フレームワークを用いて、非局所ゲームを圧縮し、その間隙を保持する技術。
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停止問題への還元:停止問題を解くための非局所ゲームを構築し、そのゲームが量子戦略によって解決可能であることを示す124。
意義
この定理にはいくつかの重要な意義があります:
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Tsirelson問題とConnes埋め込み予想:この結果はTsirelson問題に否定的な回答を与え、Connes埋め込み予想も否定します。これにより、量子力学と作用素代数における深い結びつきが示されました124。
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計算複雑性理論への影響:MIP*クラスの完全な特徴付けにより、多重証明者対話型証明システムの計算能力について新たな理解が得られました。特に、古典的なPCP定理との関連性や量子PCP予想への影響も考察されています124。
以上がMIP* = RE定理についての詳細です。この結果は計算複雑性理論と量子情報理論における重要なマイルストーンであり、多くの関連分野に影響を与えています。
その他 参考資料
・量子測定の原理とその問題点 清水明
https://as2.c.u-tokyo.ac.jp/archive/MathSci469(2002).pdf
・Quantum theory, the Church-Turing principle and the universal quantum computer
量子計算の記念碑的論文。
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