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生物学の哲学入門【読書メモ・要約・感想】進化論を深く理解・吟味したい

記事の内容

この記事では、『生物学の哲学入門』という本を紹介する。

 

生物の進化に関する理論から導かれる、哲学的な考察を案内してくれる。

 

進化生物学そのものの入門書としてもおすすめ。概念整理に有効だ。

 

そのとてもいい入門書である。

 

 

 

 

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生物学の哲学入門

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生物学の知見に基づき哲学の問いに挑み、生物学に関する哲学的問題を論じる「生物学の哲学」。ダーウィン進化論は何が新しく、そして私たちに何をもたらした? 利他性は進化論で説明できる? 進化は漸進的か断続的か? 発生も進化する? 種に分類できない生物もいる? 基礎から最新の話題まで明快な思考で解き明かす、決定版入門書。

 

 

 

 

ダーウィンの進化論

ダーウィンの進化論は2つの軸の融合である、ということにまず注意しよう。

 

  • 進化のパターンについて
    • 生命の樹仮説
  • 進化の過程について
    • 自然選択

 

 

 

 

 

 

そもそも自然選択による進化ってなに?

 

「環境の方に選ばれた」という受動的なイメージが正確。

 

適応とは、生物の特徴が環境に合っていたということ。つまり、適応度が大きければ、生存や繁殖に有利だ。

 

個体には差がある。その環境での適応度が高い個体は子孫を残しやすい。その性質が遺伝していく。生物の進化とはこの積み重ねである。

 

変異には方向性がないことに注意。変異の方向はあくまでもバラバラであり、適応度が高いことは結果論に過ぎない。キリンの例で言うなら、生き残るために首を長く伸ばそうと能動的に変化したわけではない。

 

この説明には、次の例がわかりやすい。

 

なぜ人間の男は若い女が好きなのか?

 

変異により、若くない女を好む男も存在していた。しかし、彼らは結果として、子孫を残すことに不利だった。だから、若い女を好む性質が残った。

 

この説明のシンプルさが自然選択の強さだ。

 

 

 

 

自然選択の3条件

表現型の変異

適応度の差異

遺伝

 

※個体、遺伝子、という概念が条件に含まれていないことに注意。

 

 

 

集団遺伝学による自然選択の基礎づけ

集団遺伝学の誕生により、ダーウィン進化論とメンデルの遺伝学が総合された。遺伝子のパターンは離散的だが、その表現は連続的である。この表現の分布の世代ごとの変化が自然選択で説明できる。 

 

 

 

 

 

 

 

 

「利他性」は説明できるか?

 

生物学でいう「利他性」とは、自己の適応度を下げて他者の適応度を上げる性質のことだ。この性質は生存や繁殖に不利に働く。だから、自然選択の反例になっているように見える。どうすれば、自然選択で説明できるだろうか。2つの説明モデルがある。血縁選択説と形質群選択説だ。

 

 

血縁選択説

遺伝子を主役にする。ある個体が犠牲になっても、次世代においてその遺伝子が増えればいい。この考え方を取り入れた適応度は包括適応度として数式化されている。包括適応度を使えば利他性の普及を数式で説明できる。

 

 

 

 

形質群選択説

 

群選択説では、自然選択は個体だけではなく群れにも適用されるとする。適応度が高い群れの方がそうでない群れよりも生き残る。

 

この群れの単位を「ある形質に関して互いの適応度に影響を及ぼしあう」範囲と考えるのが、形質群選択説だ。集団が形質群に分割されていて、利他的な個体の頻度が各群で異なれば、集団全体で見たときに利他的な個体が増える可能性がある。

 

 

 

 

選択のレベル論争

2つの説明モデルのどちらが正しいのか?それは次のイシューに依存する。

 

自然選択は、個体、群れどちらのレベルで作用しているのか。

 

平均化の誤謬があるから形質群選択説が必要、という立場がある。形質群選択説でなければ、利他性の普及を説明できない。形質群選択説では、個体選択と形質群選択の二つの因果過程を区別する。それらを区別せず、適応度を平均化してしまうと、「普及した形質は平均適応度が高かった」という結果論になり、説明になっていない。

 

 

 

哲学的対立

 

モデル多元論

利他性の普及について、どちらのモデルでも同じ説明できる。つまり、形質群選択のレベルは説明のための概念装置にすぎない。規約主義、道具主義的。

 

プロセス多元論

個体選択と形質群選択という複数の選択過程が存在し、形質群選択説のみがモデルとして有効だと考える。複数の選択過程を要請するため、実在論的。

 

実験で決着はつかない哲学的な問題である。

 

 

コメント

これはなぜ哲学的な問題なのか?現段階では実験できないからか。それとも、未来永劫、実験できないからか。文脈からは後者のように見える。しかし、その根拠を示す説明がなかった。「生物学の哲学」の本なので、その部分の哲学的な説明をもっと読みたかった。

 

 

 

 

 

大進化と断続平衡説

 

化石の記録を見ると、変化が漸進的ではなく、急な変化が起こっているように見える。

 

生息している場所が分かれると急激な進化が進む。一方で、それ以外のケースではあまり変化しない平衡状態にある。これが断続平衡説という仮説だ。現在では、急激な形態変化の過程にはさまざまなケースがあるとみなされている。よって、現在の断続平衡説は、大進化の過程ではなく、大進化のパターンに関する有力な説となっている。

 

 

 

 

 

 

 

 

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