脳と心の不思議
みなさんは、脳と心の不思議に関心を持ったことはないでしょうか?
たとえば、自分が見ている世界と他人が見ている世界、本当に同じ世界なのでしょうか。
今回は、脳と心の不思議に迫る良質なドキュメンタリーを紹介します。
記事を読み終えると、脳と心の関係について、一歩深めて考えられるはずです。そしてそれは、あなたの人生を少しだけ良いものにするかもしれません。
- 脳と心の不思議
- NHKスペシャル 脳と心 脳が世界を作る
- 右脳がほとんど働いていない少年
- ものを見るとはどういうことか?
- 「動き」だけが見えない女性
- 人の顔だけが認識できない男性
- 関連記事
- 心脳問題入門
- まとめ
NHKスペシャル 脳と心 脳が世界を作る
今回見たのがこちら。
脳と心についてのドキュメンタリー。
90年代に放送されたようで、20年以上も前の作品。しかし、養老孟司さんが監修されているように、今見ても質が高く楽しめた。
この時から、どれほど脳科学は進歩したのかも気になるところ。最近の脳科学本を読んでいても、核心部分での大きな進歩は少ないのかな、と思える。
脳科学の核心ってなんだよ、と突っ込めるが、そこをつかむだけでもとても奥が深く、難しいように思える。核心的な議題についても、いつか整理してみたい。
右脳がほとんど働いていない少年
後遺症により、右脳の機能がほとんど働いていない少年が紹介されている。しかし、彼には驚異的な絵の才能がある。
彼は右脳が働いていないため、左半分の視野がないことになる。私たちが見ている視野の、左側が暗く何も見えていない状態だ。
どうして、右脳の機能が働かないことが、絵の才能をもたらすのだろうか?
このドキュメンタリーでは、そもそも脳の解明がまだまだ進んでいないということに触れ、明確な答えを掲示していない。
しかし、いくつかの示唆は与えてくれる。
物事を深く見るには、五感を総動員することが欠かせない。彼の場合だと、視覚情報が足りない分、他の感覚で補っているのでは、と推測される。さらに、彼の絵には彼の心の状態がとてもよく表れる。だから、心で感じ取ったことが素直に表現されやすい。これが、彼の絵に独特なタッチを与えるのだろう、と言われていた。
ものを見るとはどういうことか?
目で見ているものと、脳で見ているものは違う。視床という中継所が、目に入ってくる情報にフィルターをかける。その結果、脳独自の世界を、脳が構成することになる。
その例が、三次元映像の再構成だ。奥行きは、脳の計算によって出来上がる。網膜上においては、二次元の絵にすぎない。脳が計算して初めて、「奥行き」というものができる。
大脳新皮質の最小処理単位はコラムと呼ばれている。輪郭線、奥行き、動き、色などが別々のコラムで、別々に処理される。それら別々の処理が、何重にも最終的に統合され認知が完成する。
「動き」だけが見えない女性
脳の損傷により、「動き」だけが見えない女性も紹介される。この例は、世界的に見ても珍しいものだという。これは、とくに脳と心の不思議さを感じさせるものだ。是非、動画を見てみてほしい。
彼女は、動きを認識できない。例えば、グラスに水を注ぐ時も、水がいっぱいになる動きがわからないので、水があふれてしまう。
世界が静止画になるのだ。
なめらかな映像ではなく、飛び飛びの静止画に見えてしまう。
街を歩くときでさえ、周りの世界の動きがわからない。歩く人も、車の動きも。さらに、自分自身も動いている時は、余計に混乱してしまうのだという。
人の顔だけが認識できない男性
側頭葉の内側への障害により、人の顔を認識できない男性も紹介される。彼は、自分の顔すらわからないのだ。
目や口の形、シワなど部分は認識できる。しかし、それらを統合した顔全体は認識できない。
この症状は、相貌失認と呼ばれるものだろうか。生まれつきこの症状を持つ人もいる。推理小説などで、時々目にすることも多い。
人の顔だけに反応する神経細胞があるのか?という疑問にも触れられる。ものを見る仕組みでも触れたように、特定の形だけに反応する神経細胞がある。それらの研究も、猿などの実験から成果が出ている。
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心脳問題入門
心と脳の関係を考える学問領域として、心脳問題というものがある。実は、あらゆる領域の科学を横断しなくてはならず、とても議論が多い分野になる。とくに、哲学的な誤謬が発生しやすい。だからこそ、とても勉強になる。
入門としては、この本がおすすめ。
まとめ
・脳の損傷が、認識に影響を与える
・脳の部位と、知覚の要素の関係は深い
・脳と心の関係には、心脳問題という大きな溝がある
本ブログが、誰かの自由につながったのなら嬉しい。