心、社会へ
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オートポエーシスという関係を元に、システムをとらえ直した西垣通氏の基礎情報学。続いて、心、社会というシステムを定義しにかかります。
心というシステムの本質をオートポイエーシスとするのが面白い!!心に興味がある私には、大好物。
こちらからの続きです。先にどうぞ。interaction.hatenadiary.jp
本はこちらです。
3.1心的システム
心的システムは、「思考」を構成素とするオートポイエティック・システムである。すなわちそこでは、思考が思考を産出するという、自己循環的なダイナミクスが有機構成として作動している。
オートポエーシスという関係の特徴とは、構成素が構成素を産出するというものでした。そこで、心的システムの場合には構成素は思考です。つまり、思考が思考を産出するのです。
そして、思考の一部が記号によって記述されたならば、それは社会情報になる。よって、心的システムは世界を観察記述するシステムになる。観察記述できるのは、人間の心的システムだけであることに注意。ここがのちに重要になってきます。
いつも何気なくしている思考。オートポエーシスという性質からも、重要なのは閉鎖性です。外からの刺激は、脳の中で、これまでの自分の経験をもとに再構成されます。この時点で、思考が思考を産出しています。つまり、閉じている。
思考が思考を生んでいく。これは、外からの刺激がなくてもいいことを示します。とくに、夢を見ている時がわかりやすい。目をつぶっていて、外からの刺激はないのに、頭の中では思考がぐるぐると動いています。ここに顕著に表れているのが、オートポイエーシスの閉鎖性なのです。
そう、心的システムは閉じているのです。この心の閉鎖性こそ、主観世界が成り立つ理由であると著者は述べています。一方、私たちは他者とコミュニケーションしながら社会を成り立たせます。
心的には閉じているのに、どうやってコミュニケーションするんだ??
→社会に注目しましょう
3.2社会システム
社会での伝達は、どのように行われるのでしょう。
意味を伝えようと思った時、共同体や組織としては閉じている。これは、国が変われば意味の伝達が困難になることを考えれば理解しやすい。
社会システムの中身は?
社会システムは、「コミュニケーション」を構成素とするオートポイエティック・システムとして定義される。そこでは、コミュニケーションがコミュニケーションを自己循環的・再帰的に産出するプロセスが有機構成として作動しているのである。
コミュニケーションが構成素!?なるほど、そうきたか...
社会システムをコミュニケーションという出来事の集まりとして捉える。つまり、人間という物理的的存在の集まりが社会の本質ではないのです。
そこでは、コミュニケーションが継続的に発生していることが、社会システムの安定的な作動につながります。その閉じている社会の中で、ある程度の意味が伝わり続けるのです。まさにコミュニケーションがコミュニケーションを生んでいくわけですね。これが社会システムの定義か...
個人同士(心的システム)の完全な意味伝達は不可能ではある。しかし、社会システムという視点から見れば、ある程度の意味伝達は可能になっている。実際に、コミュニケーションが続いていけるなら、細かい違いは気にならない。日常会話なんかがそうですよね。
心的システム同士のあいだの情報の意味内容の伝達とは、社会システムの性格と連動した相対的なものなのだ
なるほど、意味伝達という観点から見たとき、心的システムは社会システムの特性と連動しているのですね。国や組織ごとに異なる社会システムがあって、それと相対的に、個人の心的システムにおける言葉の意味なんかが決まってくる。
だからこそ、擬似的ではあるが、意味を伝え合うことができるのです。
3.3観察者の役割と階層的なシステム
心的システムと社会システムの共通項は、構成素がモノではなく、思考やコミュニケーションなどの出来事(コト)である点です。
ここまで来てやっと、基礎情報学が対象とするシステムの外観が見えてきます。システムとシステムの関係はどうなっているのか?とくに、心的システムの役割に注意です。
・情報学としてはどこが重要か?
いかなるシステムも、それと構造的カップリングした観察者によって記述されない限り、人間社会で通用する社会情報によって明示化されず、われわれにとっては未知のままに留まるということだ。
例えば、ハトの社会は人間がいなくても成立している。しかし、人間が観察記述しないとそれは人間社会では認知されない。
観察記述がそもそもの前提!!
・どのように観察記述するのか?
人間の心的システムと、ハトの社会システムが構造的カップリングする。
→外側からの視点ではなくて、対象システムの視点にそって内側から観察記述する。そうでなければ、その生物独自の意味をとらえられない
・必ず心的システムとカップリングしている
観察記述されないかぎり社会に認知されない。ということは、基礎情報学が対象とするシステムは、必ず心的システムとカップリングし複合システムになっている。この複合性が、閉鎖的なはずのオートポイティックシステムに、階層的な性質をもたらす。
・階層さ
コミュニケーションを構成素とし、心的システムと構造的にカップリングした階層的オートポイエティックシステム
これを、基礎情報学はあつかう。
やっと基礎情報学はどんなシステムを扱いたいのか見えてきましたね。そのために、心、社会をオートポイティックシステムとしてとらえ直したのです。情報の意味作用を大事にしながら、行き着くところが意味作用ありきのシステム。なるほど、面白いです。
意味作用に着目し、生命/心/社会をめぐる情報現象を、統一的なシステム・モデルによって論ずること
この基礎情報学のメインテーマへの基礎づけを確認できたように思えます。
みなさんは、この大きなテーマにワクワクできたでしょうか?こういうことを考えている学者もいるのだな、という感覚だけでも持ち帰ってみてください。