記事の内容
このシリーズでは、高校の生物で扱う内容をざっくりと紹介します。
高校生が入門するのにも、社会人が復習するのにもおすすめです。
暗記になりがちな生物ですが、できるだけ生物学の面白さと不思議さを意識しながら進めていきます。
私自身、生物学に興味を持っているので、一緒に楽しく勉強していきましょう。
この本を参考にまとめていきます。
いろいろな呼吸
呼吸とはなんでしょう?
息を吸ったり吐いたりすることは、厳密には、
外呼吸といいます。
ではなぜ、酸素を外呼吸で取り入れる必要があるのでしょうか?
それは、細胞の中でブドウ糖などの有機物を分解するのに酸素が必要だからです。
生きていくために必要なエネルギーを取り出すために、ブドウ糖を分解します。
こうした細胞内での反応の方は、内呼吸(ないこきゅう)といいます。
この内呼吸をくわしくみていきましょう。
乳酸発酵
発酵食品は、馴染み深いと思います。
発酵も、内呼吸の一種なのです。
乳酸菌は、ブドウ糖を分解してピルビン酸に変えます。
このとき、水素とエネルギーが生じます。
ピルビン酸に水素が結合すると、乳酸になります。
エネルギーを取り出しているので、内呼吸なわけですね。
乳酸という言葉は、スポーツをよくする人は聞いたことがあるかと思います。
この乳酸発酵と同じ反応が筋肉の中でも起こっているのです。
アルコール発酵
お酒のアルコールも、発酵によって作られます。
酵母菌が行う反応で、アルコール発酵と呼ばれます。
ブドウ糖をピルビン酸まで分解するのは乳酸発酵と同じです。
そのあと、ピルビン酸に脱炭素酵素がはたらいて、二酸化炭素が発生し、アセトアルデヒドという物質に変化し、最終的にエチルアルコールが生じます。
パンもこのアルコール発酵を利用します。パン生地が膨らむのは、二酸化炭素が生まれているからなんですね。
腐るのも、発酵の一種です。
発酵も腐敗も、カビや細菌などの微生物が生きていくために一生懸命有機物を分解している反応なのです。
好気呼吸(酸素呼吸)
我々が行っている内呼吸は、酸素を使うため、
好気呼吸と呼ぼれます。
ヒトもイヌも魚も植物も行う呼吸です。
ブドウ糖と酸素から、水と二酸化炭素が生じます。
ATPとは?
こうした、いろいろな呼吸で生じたエネルギーはどんな形で蓄えられるのでしょうか?
ATP(アデノシン三リン酸)という物質の化学エネルギーの形で蓄えます。
アデニンとリボースからなるアデノシンに、3つのリン酸が結合しています。
リン酸とリン酸の間には、たっぷりとエネルギーが蓄えられているのです。この結合をきれば、蓄えてあったエネルギーを取り出すことができるのです。
アデノシンに2つのリン酸が結合した物質は、アデノシン二リン酸(ADP)といいます。
呼吸で生じたエネルギーを使って、ADPとリン酸を結合させてATPをつくれば、エネルギーを蓄えることができます。
生物は、ATPから取り出したエネルギーを使って、筋肉を動かしたりして生きていくわけです。
ATPはお金
なんでいちいちATPという形に変換しなければいけないのでしょうか?
私たちの社会では、お金があれば、色々なものと交換することができます。
便利ですよね。
このように、身体の中でも、必要な時に必要な反応にエネルギーを使うことができた方がいいのです。
そのために、通貨のように流通と交換がしやすいものだといいのです。
だからこそ、ATPはエネルギーの通貨のようなものといえるでしょう。
光合成
動物は、食べないと、つまり有機物を摂取しないと生きていけません。
しかし、植物は食べ物をとりません。
なぜなら、植物は有機物を自ら作り出すことができるからです。
それが、光合成なのです。
植物は、自分で有機物をつくって、これを呼吸で分解してエネルギーを取り出しています。
植物は、葉緑体に含まれるクロロフィルにより、光エネルギーを吸収します。クロロフィルにより、葉っぱが緑色に見えます。
葉緑体の中にある膜、チラコイドにより、吸収したエネルギーを使って水を分解します。
酸素と水素になります。
また、光エネルギーをATPにも変えておきます。
ここで準備した、水素、ATPと外界から吸収した二酸化炭素を使って、ブドウ糖のような有機物を生成します。
これは、カルビン・ベンソン回路、と呼ばれています。
この回路は、葉緑体の隙間であるストロマという部分で行われます。
細胞の中に別の生き物?
葉緑体や好気呼吸に関するミトコンドリアについては、ある説があります。
これら細胞小器官は、元々は別の生物だったという説です。
・独自のDNAをもち、半自律的に分裂して増殖する
葉緑体やミトコンドリアは、核とは別の自分専門のDNAを持っています。
・異質二重膜でできている
葉緑体もミトコンドリアも、外側と内側の膜の成分や性質が少し異なるのです。だから、ある細胞に別の細胞が入り込んだ証拠、と考えられています。
このように、別の生物が入り込んで、宿主の細胞の中で共同生活しているうちに、細胞小器官になったという考えを細胞共生進化説といいます。
光がなくてもブドウ糖をつくる生物?
光が届かない深海などの生物は、どのようにブドウ糖をつくっているのでしょうか?
硫黄細菌という細菌は、海底から噴き出してくる硫化水素と酸素を結合させ、その時生じるエネルギーを使ってブドウ糖を合成していたのです。
この反応を化学合成といいます。
このほかにも、自前のエネルギーでブドウ糖を合成する細菌たちが存在しています。
化学としての生命
生きるためにはエネルギーが必要です。だれでもイメージできますよね。
生物の中で、エネルギーを利用することがどのように実装されているのか、今回の話から少しは見えてくると思います。
ATPという化学物質を上手に使っているのですね。
化学としての生命、です。
しかし、生命はどうやって、こんなにもうまく機能する化学反応を利用するようになったのでしょうか?
人間が機械を設計するのと作られた過程は同じなのでしょうか?いや、目的を持った設計者が最初から全体を組み立てたわけじゃないですよね。
生物の場合は、進化です。
進化によって、こうした機能がデザインされてきたのです。進化のからくりについて、興味が増しますね。
次回の内容は、生殖です。