記事の内容
このシリーズでは、高校の生物で扱う内容をざっくりと紹介します。
高校生が入門するのにも、社会人が復習するのにもおすすめです。
暗記になりがちな生物ですが、できるだけ生物学の面白さと不思議さを意識しながら進めていきます。
私自身、生物学に興味を持っているので、一緒に楽しく勉強していきましょう。
この本を参考にまとめていきます。
生物の定義とは?
わたしたちは普段、生物と無生物を直感てきにわけています。
しかし、この線引きを完璧にするのは困難です。
小さな細菌よりも、スマホ、または人工知能の方が複雑で賢そうです。けれど、生きているようには感じられない、ですよね。
おおざっぱには、次の条件をすべてみたすものが生物です。
1 細胞でできていること
2 酵素をもち、代謝が行えること
3 核酸をもち、自己複製できること
4 刺激に対して反応できること
アメーバのように、たった一個の細胞でできている生物もいれば、私たちのようにたくさんの細胞でできている生物もあります。
大切なことは、生物はすべて細胞でできているという事実です。
代謝とはなんでしょうか?
生きていくために必要な物質を取り込んで、これを分解したり合成したりする化学反応のことです。
死んだ生物は、代謝も止まります。
自己複製とは、自分の子孫をつくることです。
核酸は、その生物がどんな生物なのか書いてある設計図のようなものです。
複製するには設計図が必要そう、ということはイメージがしやすいかもしれません。
刺激に対して反応できることも、生物の特徴です。
ドラマなどで、人が死んだかどうかチェックするために、目に電灯の光を当てるシーンがあります。
人の目は、明るいと瞳が小さくなり、暗いと大きくなります。死んでしまうと、この反応は起こりません。だから、生死の判定に使われるのです。
ウイルスとは何か?
しかし、この定義からもれるあいまいな存在がいます。
そう、ウイルスです。
ウイルスは細胞でできていないし、単独で代謝を行うこともできません。
しかし、ウイルスは自己複製することができます。よって、ウイルスは生物と無生物の中間的な存在だと考えられています。
ウイルスに感染することによって、私たち人は死に至ることもあります。
生物であるわたしたちと、曖昧な存在であるウイルス。
この関係性の特徴とはどんなものなのでしょうか、気になります。
中間的な存在てなんだよ!
生物の方に近いのか、無生物の方に近いのか、どっちなんだよ!
なんて疑問がわいてきますよね。
のちに、ウイルスと生物との関係性について、より深ぼる章があるので、楽しみにお待ちください。
次回のテーマは、「細胞の中はどうなっているのか」です。
細胞の中はどうなっているのか?
細胞のなかは、ひとつの社会のようなものです。
社会はいろいろな機能で成り立っていますよね。
道路があったり、発電所があったり、ごみ処理施設があります。
こうした社会の例えの視点から見ると、細胞が何をしているのかイメージしやすいと思います。
細胞は、何をするためにどんな構造をもっているのか。
ここがポイントです。
核 設計図管理室
核の中には、糸状の構造が詰まっています。染色体です。
染色体は、設計図であるDNAをいれてある入れ物のようなものです。
設計図管理室→入れ物→設計図
核→染色体→DNA
ミトコンドリア 発電所
細胞が生きていくために必要なエネルギーをつくる、まさに発電所に相当するのがミトコンドリアです。
私たちの社会では、エネルギーは電気という形で色々な仕事に使われます。
では、細胞の社会では、エネルギーはどんな形で使われるのでしょうか?
ATP(アデノシン三リン酸)と呼ばれる化学物質こそ、細胞の社会でのエネルギーです。
地球上のすべての生き物はこのATPを利用しています。
この共通点から、生物は同じ祖先から進化してきたのだ、と考えられています。ヒトもアメーバも、根っこはおなじわけですね。進化の壮大さ、生命の不思議を感じます。
火力発電、水力発電とエネルギーの作り方にもいろいろとあるように、細胞の社会でもいろいろなエネルギーの作り方があります。
その一つが呼吸です。(のちの章で、呼吸について深掘りします。)
葉緑体 ブドウ糖合成の工場
光エネルギ―を使い、ブドウ糖を合成する光合成をおこなうのが葉緑体です。
動物ではなく、植物の光合成を行う組織の細胞にだけ存在します。
地球上のほとんどの生物は、この光合成で生じたブドウ糖を直接、あるいは、間接的に利用して生きています。(生物のつながりを感じますよね)
小胞体 細胞内にはりめぐらされた道路
小胞体は、薄い袋状の構造で、細胞内に広がっています。この中を物質が運ばれていくので、ちょうど道路のようなものです。
そして、小胞体の表面には小さい粒が付いています。それが、リボソームです。
リボソーム たんぱく質合成の工場
人体の主成分はたんぱく質です。
それなら、たんぱく質を合成してくれる機関はとても重要ですよね。
たんぱく質合成の工場こそが、リボソームです。
ゴルジ体 郵便局の配送センター
リボソームという工場で合成されたたんぱく質は、小胞体という道路をとおって、ゴルジ体へと運ばれてきます。
ここで、いろいろな糖が付け加えられます。
この糖は、細胞内にとどめておくのか、細胞外に分泌するのかを決定する札のようなものです。配送センターというイメージがぴったりですね。
液胞 倉庫
細胞内で生じた物質を蓄えておく袋状の構造が液胞です。
たとえば、アントシアン呼ばれる色素があります。紅葉したモミジの色の正体です。
秋が深まってくると、この液胞内にアントシアンが蓄積し、紅葉してくるわけです。
リソソーム ゴミ焼却炉
細胞内の余分なものや細胞内に取り込んだ異物などを処理してくれるのがリソソームです。
ばい菌を食べてくれる白血球では、このリソソームが非常に発達しています。
ペルオキシソーム 危険物処理場
細胞内では、過酸化水素という危険物質が生じることがあります。
その過酸化水素を分解してくれる酵素であるカタラーゼをふくみ、処理してくれるのがペルオキシソームです。
リソソームと似ていますが、処理できるごみの種類が違う、というイメージですね。
細胞の種類
細胞という社会がどう動いているのか、なんとなくわかってきたでしょうか。
まずは、細かい機関の暗記ではなく、目的をもった社会としてイメージするのがいいと思います。
そもそも、なぜ細胞はこのような機能を持つにいたったのでしょう?
なぜ地球の生物は、この「細胞」をみな共通にもっているのでしょうか。
興味は尽きないですよね。
細胞と言っても、様々な種類があります。
大きいものだと、私たちが普段食べる卵の黄身も、卵細胞というひとつの細胞です。他にも、神経細胞や筋肉細胞、骨細胞などもあります。
細胞は、大きくは2つに分かれます。
ほとんどの生物は、核をもつ真核細胞です。
一方、核のない、厳密には核膜のない原核細胞もあります。大腸菌などです。
原核細胞では、真核細胞の社会のような機能ごとの区分けがない、というイメージです。
化学的な機械として機能している細胞の社会。
神のような設計者がいないと考えると、とても不思議ですよね。
そして、単細胞生物から、ヒトのような多細胞生物になった過程も不思議です。
暗記になりがちな生物ですが、「不思議さ」を忘れずにゆるくやっていきましょう。