記事の内容
この記事では、『物価とは何か(渡辺努)』という本を紹介します。
経済とは何かを考える上で、物価は中心概念です。
日常会話でも、物価という言葉はよく使いますよね。
しかし、よくよく考えてみると、物価とはなんでしょうか?
物価とは、なんの値段なのか?
物価は、何によって決まるのか?
インフレやデフレと物価との関係はどうなっているのか?
これら疑問に迫ることができる本が今回紹介したい本です。
特定の主義にこだわることなく、実証的な経済学の本であるため、入門書として誠実です。
物価とは、蚊柱である
個々の商品が蚊である。
それぞれの蚊が動き回り、蚊の集まり、つまり蚊柱としての動きが出来上がる。
蚊と蚊柱の関係こそ、個々の商品と物価の関係である。
物価はなんの値段なのか?
実は、物価変動の原因は、個々の商品の魅力にあるわけではないのだ。
物価は、貨幣の魅力との関係によって決まる。
貨幣の方が魅力的ならば、物価は下がる。
貨幣に価値があることの根源は、決済に使えるということ、または、政府が存在し税金として使えること、と考えられている。
著者は、どちらか一方だけの考え方を採用することを避けている。まだ実証されていないからだ。
貨幣の価値が税金として使えることであるならば、政府の財政が健全化すれば、貨幣の魅力は高まる。物価は下がる。
物価の定義
生計費指数、というものが理想の物価の定義だという。
次のような内容だ。
昨日と同じ効用を得ようとしたときに必要となる最小限の支出
しかし、効用は個人によって異なる。厳密な計測はできない。
よって、実際には、その他近似となる指標が使用されている。
物価は制御できるか?
市民の頭の中にあるインフレ予想に物価は左右される。
では、どうすれば人々の予想を制御できるのか?
中央銀行から市民への働きかけが重要になる。
しかし、逆説的だが、市民が中央銀行の施策に無関心である時こそ、物価は安定する。
とはいうものの、市民が中央銀行に無関心では、施策を打ちづらくなる。
市民の予想を計測することも難しい。
従来の経済学では、まだまだ個人差をモデルに組み込めていない。
例えば、年齢差ではなく、世代差によってインフレ予想が異なることが知られている。
より有効な施策は、物語性のある施策である。
よりメッセージ性が強く市民が受け入れやすいナラティブ経済学が注目されている。
物価理論で重要なこと
個々の商品と物価全体というミクロとマクロの関係には、「全体は部分の総和である」というフレームは当てはまらない。
よって、相互作用が重要である。
商品間、企業間、消費者間での相互作用が鍵である。
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