あらすじ
空の底で生き、戦う人間たち。空でしか笑えない「僕」は、飛ぶために生まれてきた子供なんだ――「僕」と「彼」、そして「彼女」の物語。森博嗣の新境地、待望のシリーズ第2作!
amazon商品紹介より
スカイクロラシリーズ
森博嗣によるスカイクロラシリーズ2作目。ただし、時系列的にはこの本が一番最初。
このシリーズは一度通して読んでいる。しかし、全体が茫洋としていて、はっきりとした感想を持てない。抽象度が高く、淡々とした雰囲気がクールだ。これがまたこの本、作者のいいところでたまらなく私は好きだ。けれど色々と謎が多いんだよね...
その魅力にこうして吸い寄せられまたまた読んでしまう。
私の奥底にその本をどうしてか求めてしまう何かが存在しているのだろう。ふるさとを思いだし、惹かれるように。
森博嗣の本って刺さる人にはとことん刺さる、と言われるが、私がそう。
中毒レベルでハマった。私にとっては、まるで赤子にとっての母親のように、読まなくてはならないものだった。
今回は時系列順にしっかりと読みたい。
ナ・バ・テア
今作は比較的わかりやすい。舞台設定が謎なものの、そのままで物語が楽しめる。
設定という枠組みがなくとも、彼らの思考という本質が豊かでお腹いっぱい。
草薙の自由で鋭い思考。
彼女の内面の世界に加えて、彼女が<キルドレ>であるという事実が読む私には響いた。動揺するのはむしろ第三者である読み手の方で、草薙自身は大した違いとは思っていない。自分の存在にこだわるような描写は少なかった。彼女が考えているのは、いかに自由になるか、だけである。私たち大人なんかよりもよっぽど希望に溢れている。
草薙の言葉
p176
僕にとっては、思いやりや優しさというのは、他人から自分を切り離すためのもので、つまり、相手も自分も、お互いに自由にしてあげる、拘束しない、邪魔をしない、そういう状態にするためのものだ。
p270
僕のような生き方?
どんな生き方だろう?
自分に生き方がある、とさえ自覚していなかった。
生き方なんて、知らない。
知らなくても生きていける、という方法が、
少しわかっただけだ。
ほんの少しだけ。
生きていけるかもしれない、という道筋が、
見えただけだ。
ほんの少しだけ。