FACTFULNESS(ファクトフルネス) 世界を正しく知るために
みなさんは、「ファクトフルネス」という本を知っているでしょうか?
データを使って世界を正しく見るために、新しい枠組みを提供してくれる本です。
この本の中では、世界のデータについての質問が用意されています。
質問1: 現在、低所得国に暮らす女子の何割が、初等教育を修了するでしょう?
A:20% B:40% C:60%
質問2: 世界で最も多くの人が住んでいるのはどこでしょう?
A:低所得国 B:中所得国 C:高所得国
その質問の回答に愕然!!!
自分はこんなにも世界をわかっていなかったのか...
本を読んでみると、私だけではなく、あらゆる人々が世界の現状について知らないことがわかります。インテリ層でさえ、チンパンジーよりも正答率が低いのです!!
いったいなぜなのでしょう?そこには、深い理由があったのです。
記事を読み終えると、きっとこの本が読みたくなるはずです。人間の認知のどうしようもなさ、データサイエンスの重要性を再確認できるはずです。
- FACTFULNESS(ファクトフルネス) 世界を正しく知るために
- どうして「本能」に焦点を当てるのか?
- TED動画
- 認知バイアスを理解しなければいけない理由
- 10の本能
- 「許し」の姿勢
- 関連記事
- まとめ
どうして「本能」に焦点を当てるのか?
そこらへんの統計リテラシー本との違いはなんだろうか?
それは、著者の長年の経験から来る「人間ってどうしようもないな」という思いである。そこには、人間への諦めと希望が混ざった分析がある。
人々が世界を正しく見れていない理由は、ただの知識の遅れではなかったのだ。そこには、人の本能が関係していた。その本能のせいで、データを偏った目で見てしまう。これらは、人間である以上遺伝子レベルに刻み込まれたものだ。著者自身でさえ、何度も本能のせいで間違いを犯してきたという。
そんな著者の思いがこもった概念が「ファクトフルネス」である。このフルネスという言葉には、どういう心の在り方でいるべきなのか、という著者の信念が表されているように思う。心の在り方を示す「マインドフルネス」という概念にあえて近づけているようだ。
そうした、人間の認知バイアスを10個に分類して、注意すべき点を教えてくれる。
・分断本能
・ネガティヴ本能
・直線本能
などだ。ちゃんと〜〜本能という名称になっている。
TED動画
著者が実際に話している動画である。日本語字幕があるので、是非見てみてほしい。本を読む前に見て、興味を持てたなら本を買ってもいいと思う。
認知バイアスを理解しなければいけない理由
人の本能、これは、認知バイアス、思い込みという言葉に言い換えてもいいかもしれない。やはり、自分自身と社会を正しく見るには、人間の認知の仕組みの理解が重要になる。
最近話題になった『人生は、運よりも実力よりも「勘違いさせる力」で決まっている』という本との類似点に気がついた人も多いと思う。どちらの本も、人間の心の性質に焦点を当てている。心の性質を理解することは、社会と人を見抜くためには欠かせないのだろう。
本ブログでも紹介しています。
他者への認知バイアスを必ず持ってしまうのが人間
自分の意識では、無意識くんの仕業に気づけない→認知バイアスを修正できない
他者の客観的な評価は不可能→実力なんてほとんど見てもらえない
10の本能
分断本能
「世界は分断されている」という思い込み
未だに、「先進国」「途上国」という言い方にとらわれている。「私たち」「あの人たち」という言葉による分類に、もはや意味はない。大半の人がどこにいるか探すべし。ほとんどの人は、中間にいる。
新たな分類として、所得レベルに応じたものが紹介される。
所得レベルに応じて、レベル1〜レベル4までに分けられる。もちろんここでも、レベル2、3の中間層がほとんどを占める。この「ファクトフルネス」を読めている人は、日本も含めレベル4に属する。
とにかくなんでも「二項対立」に分けたがるのが人間の本能だ。よくよく注意したい。
ネガティヴ本能
「世界はどんどん悪くなっている」という思い込み
良いニュースは耳に入りにくい。
「悪い」状態と、「良くなっている」という変化の方向は両立しうる。
直線本能
「世界の人口はひたすら増え続ける」という思い込み
グラフには、直線以外にも様々な形がある!!!
皆さんは今グラフと聞いて、どんな形をイメージしただろうか?直線のグラフをイメージした人が多いのでは?この本では、その他のグラフの形も紹介されている。そして、グラフの見えていない部分を不用意に予測してはいけない。
むしろ、直線以外のグラフの方が多い。
恐怖本能
危険でないことを、恐ろしいと考えてしまう思い込み
恐ろしいものほど、人間は目に入りやすい。
とくに、メディアは恐怖本能を利用しやすい。この点については、まだまだ議論を進めたいところだ。メディアと社会の関係については、こちらで考えている。日々、メディアのあり方に疑問を感じている人におすすめな記事です。
過大視本能
ただ一つの数字が重要であるように見えてしまう思い込み
比較したり、割り算するべき。
一つしかない数字は間違いのもと。
割合を見よ。
パターン化本能
一つの例が全てに当てはまるという思い込み
分類を疑う。
「過半数」という言葉に注意。51パーセントの事なのか、99パーセントの事なのか、内容をたしかめよ。
自分以外はアホだと、決めつけてはいけない。
宿命本能
全てはあらかじめ決まっているという思い込み
常に物事は変化している。ゆっくりと変化しているものには、なかなか気づけない。文化も制度も普遍的なものではない。年の離れた人と話してみればわかるように、価値観は常に変化している。
文化が変わった事例をあげてみよう。
単純化本能
世界は一つの切り口で理解できるという思い込み
一つの道具で、なんでも解決しようとしてはいけない。単純なものの見方と単純な答えには注意する。
複雑さを喜んで受け入れよう。
犯人探し本能
誰かを責めれば解決するという思い込み
個人やグループを責めるのではなく、社会を機能させている仕組みに目を向けよう。
ガイジン病のエピソードは印象的だった。かつて、梅毒は国によって呼び名が異なっていた。フランスではイタリア病。イタリアではフランス病。それほど、誰かに罪をなすりつけたいのが人間なのだ。
焦り本能
「今すぐ決めつなければ大変なことになる」という思い込み
緊急な時ほど、データにこだわろう。
極端な予測に注意。
ドラマチックな対策よりも、たいていは地道な一歩に効果がある。
「許し」の姿勢
人間の本能はどうしようもない。だから、必ず失敗をする。
大事なのはその失敗を認めて、次に活かすことだ。誰かが本能によってミスをしても、許してあげよう。自分だって本能の塊なのだから。
こうした「許し」の心構えの重要性も、この本は説いてくれる。著者の姿勢がとても優しい。だからこその、「ファクトフルネス」という概念なのだろう。
本能の使い方、心の使い方まで見直させてくれる本だ。自分と他者との関わりのなかで、是非とも生かしたい。
自分は事実を見る準備できているか?
関連記事
まとめ
・人間の本能は、偏見、思い込みを生み出す
・本能を抑えることは、著者でさえ難しかった
・本能を抑えようと努力することで、はじめてデータを解釈できる
・ファクトフルネスだからこそ、失敗を許し次に活かそう
染み込むまで読む価値のある本です。
ぜひ読んでみてほしい。
本記事が誰かの自由につながったのなら、うれしい。