記事の内容
この記事では、
世界は「関係」でできている
という本を紹介します。
不思議に見える量子論。
さまざまな解釈が渦巻く量子論。
本書は、関係論的解釈というものを紹介します。
・関係論的解釈とは何か?
・関係論的解釈のどこが面白いのか?
まとめていきましょう。
量子論に興味がある人にはピッタリな内容です。
世界は関係でできている カルロ・ロヴェッリ
【内容紹介】
"ホーキングの再来"と評される天才物理学者が"真実"を明かす
イタリアで12万部を売り上げ、世界23か国で刊行予定の話題作!
科学界最大の発見であり、最大の謎とされる量子論。
はたして量子論の核心とは何か、
それはどんな新しい世界像をもたらしたのかを、
研ぎ澄まされた言葉で明快に綴る。
量子は私たちの直感に反した奇妙な振る舞いをする。
著者によれば、この量子現象を理解するためには、
世界が実体ではなく、関係にもとづいて構成されていると
考えなくてはならないという。
さらにこの考え方を踏まえれば、現実や意識の本質は何か、
といった哲学的な問いにも手がかりが得られるのだ――。
深い洞察と詩情豊かな表現にいろどられ、
私たちを“真実"をめぐる旅へといざなう興奮の書!
竹内薫氏の解説付き。
7万部突破の『時間は存在しない』著者の最新作!
Amazon商品紹介より引用
読みやすい。
そして、文章には遊び心と美しさが溢れる。
関係論的解釈ってなに?
量子論は「情報理論」
量子論は、実体ある物そのものの運動や特徴を表現する理論ではない。あくまでも、観測に関する情報についての理論である。
ここまでは、最新の量子論の教科書にも書いてある。
この本の面白いところ、見どころはもっと先にある。
観測とは何か、を深ぼる。
観測とは?
関係論的解釈では、物理的対象どうしの相互作用すべてを観測とする。よって、量子論は、対象物同士がどう影響し合うかについての理論、ということになる。
相互作用、これは、私たちが普段使う観測という概念よりも、さらに広くありふれた概念だ。
ここからは、観測=相互作用、と思ってほしい。
物と相互作用。
さらに深ぼる。
すると、ものとは何か、ものの性質とは何か、根底から考え直すことになる。
常識からジャンプしよう。
物の性質、属性とは?
物の性質そのものに実体はなく、性質とはあくまでも相互作用の結果生じるものだ。
いま、手で持っているスマホ。
このスマホの物理的な性質である、硬さや重さ、触り心地。
これらに実体はない。
あらゆる存在の性質、すなわち属性が、じつはその存在の別の何かへの影響の及ぼし方にほかならない、ということを発見した。事物の属性は、相互作用を通してのみ存在する。
相互作用なくして、属性なし。
属性、性質とは、対象物のうちにあるのではない。
スマホが持つ物理的な性質は、あくまでも私たちとの相互作用の結果、生じているに過ぎない。
すべてのものが、何か別のものへの作用の仕方だけで成り立っているというに等しい。電子がいっさい相互作用をしていないとき、その電子には物理的属性がない。位置もなければ、速度もないのだ。
まったく相互作用していない電子があるなら、その物理的性質を問うことは根本的に無意味なのだ。
これは、物理量を観測するまでは、その物理量の値は存在しない、という量子論の成果と符合する。
さらに、驚愕の考えに進もう。
事実は相対的
事実は相対的なものに過ぎない。
ある事実が、みなさんにとっては現実で、わたしにとっては現実でない、ということがあり得るのか。 思うに、わたしたちは量子論を通して、この問いの答えが肯定的であることを発見した。ある対象物にとって現実であるような事実が、常にほかの対象物にとっても現実であるとは限らない
ある一つの対象について、異なる観察者がいるならば、観察者の数だけ事実がある。
(ここで、私の疑問。量子的重ね合わせとは、たんに、ある観察者にとっては、その対象が相互作用していない状況のことなのだろうか)
速度という性質を見れば、速度が相対的だというのは当たり前のことだ。速度は、何かに対してのみ決められる。これと同じことが、この世のあらゆる存在に適用される。
物理量(物理変数)とその値についても、相互作用ありきの概念である。
物理変数は、事物を記述するのではなく、事物の互いに対する発現の仕方を記述する。相互作用が起きていないのに、その変数に値を与えることは無意味なのだ。
対象物は、相互作用したときに何らかの値を取る変数によって記述され、その値は他でもない相互作用の相手との関係で決まる。
つまり、世界とは、関係、相互作用によって作られる相対的なものなのだ。
明確な属性を持つ互いに独立した実体ではなく、ほかとの関係においてのみ、さらには相互作用したときに限って属性や特徴を持つ存在だ。石自体に位置はなく、ぶつかる相手の石に対してだけ位置がある。空自体はいかなる色も持たないが、空を見上げたわたしの目に対しては色を持つ。空の星はまったく独立した存在として輝いているのではなく、その星が属する銀河を形作っている相互作用の網の一つの結び目なのだ……。
心理的な領域だけじゃなく、物理的領域すら、相対的ある。
常識とは全く違う。
エンタングルメント 量子もつれ
量子論のもっとも奇妙に見える現象こそ、エンタングルメントだ。
この奇妙さを関係論的解釈では、どう解釈するのか?
遠く離れた場所にある光子同士に、相関が見られる。この相関は、従来の物理学が前提とする局所実在論におさまらない。
物の性質は、相互作用の結果現れるものに過ぎない。
相互作用、に注目して解く。
遠く離れた場所AとB。
これと同時に相互作用する観測者の存在は不可能だ。
場所Aでの結果(性質)は、その結果が場所Bに知らせられるまでは、場所Bにおいては存在しないのだ。なぜなら、場所Bとまだ相互作用していないのだから。
AとBという二つの対象物の全体としての属性は、3つ目の対象物との間の関係としてのみ存在する。AとBの相関という事実は、あくまでも3つ目の対象物と相互作用するときに初めて発現する。
著者は、このようにまとめている。
エンタングルメントは、2人で踊るダンスではなく、3人で踊るダンスなのである。
ナーガールジュナの中論 「空」
ここまで読んで、あれ、なんか仏教の「空」のことじゃん、と私は感じた。
(同じ感想持った人、ぜひ友だちなりましょう笑)
その存在だけで自立したものはない。
すべては、他のものとの関係において存在する。
究極の実体なるものはない。
「有る」と「無い」を包含する概念である「空」。
有ると無いは同じこと。
有るから無い。
無いから有る。
著者は空の本質を掴んでいる。
ニヒリズムを跳ね除ける著者の次の言葉が印象的だ。
知の探求を育むのは確かさではなく、根源的な確かさの不在なのだ。
そして、本書の話題は哲学に移動していく。
二元論を超えて 全ては関係である
物質は、相互作用の結果生じている性質に過ぎない。
つまり、物理学は三人称による事物の記述ではない。関係論的解釈が正しいとするならば、物理学は常にある視点からの、一人称の現実の記述なのだ。
よって、物理的な世界、心的な世界、という常識的な考え方は根本から間違っていることになる。
世界の全ては、一人称にとっての関係性の現れだ。
物資・精神という二元論は、消えてなくなる。
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