記事の内容
この記事では、
クオリアはどこからくるのか?統合情報理論のその先へ
という本を紹介します。
この本のおもしれーところは、
意識研究の主流理論である統合情報理論の成果と限界を示し、
きちんと「クオリアの謎」に挑戦していることです!
クオリアなんて科学で研究できるのか?、て人にピッタリな面白さです。
それでは、目次をどうぞ。
- 記事の内容
- クオリアはどこからくるのか 統合情報理論のその先へ 土谷尚嗣
- 統合情報理論ってなんなの?
- 統合情報理論のすごいところって?
- 統合情報理論の課題
- クオリア構造と情報構造
- 補足 著者のYouTubeチャンネルがすごい!!
- 関連記事
クオリアはどこからくるのか 統合情報理論のその先へ 土谷尚嗣
意識と脳の関係性の謎に立ち向かうお膳立ては整いつつある! これまでの研究における発展と限界、トノーニによって提唱されて意識の理論として有望視されている統合情報理論、そして著者が取り組んでいるクオリア(意識の中身)を特徴づける研究アプローチを解説。意識研究の面白さ、研究者が抱いている興奮を伝える。
統合情報理論ってなんなの?
意識の謎を解くための有力な理論から紹介する。
認識、注意、報告、感情、言語などが一切なくなってしまったとしても、常に成り立つような意識経験の本質はあるのか?
本質をつかむために、数理的な理論があるといい。
理論があれば、意識の境界、量、質を数学的に説明することができる。
統合情報理論とは、意識すべてに共通する、根本的・基礎的な特徴を定めることにより意識の本質を理論化したものだ。
意識の5つの公理を準備することから始まる。
1 存在性
意識はそれをもつ者にとって存在する
2 組成性
意識は、さまざまな部分的な意識内容で構成されている
3 情報性
意識は、他の意識と区別がつく。差がある。
差異の度合いが情報量である。
4統合性
意識は、一つのものとして統合されて経験される
5排他性
意識は、それ以外の意識と同時には起こらない
青色のクオリアを経験しているときには、赤色のクオリアは感じない。
統合情報理論では、その名の通り、意識の情報性と統合性に注目し、意識のレベルを定義しようとする。
それでは、統合情報量が高いシステムはどんなものか?
たくさんの内部状態のパターンを持ち、部品同士がお互いに複雑な影響を与え合い一つに統合されている
統合情報量が高い=意識レベルが高い
と考えられる。
統合情報理論のすごいところって?
意識の本質を数値化できるように理論を組み立て、近似的にではあるが、意識量の測定実験もうまくいっていること
意識にはレベルがある。
・普段起きて活動している時
・浅い眠りの時
・熟睡している時
・昏睡状態の時
統合情報理論によって導かれる基準をもとに、意識のレベルを測ることができる。
脳を直接刺激し、脳の反応を記録する。そうすると、被験者の主観的な報告なしに、意識レベルを測ることができる。例えば、意識と無意識を判別できる。
意識レベルのざっくりとした測定には、理論的にも実験的にもうまくいきつつある。
こうした成功をベースに、統合情報理論には、次のような目標がある。
意識の境界や、境界内で経験される意識の量を定め、その意識がどんな意識の質から成り立っているのか探ろうとする。
統合情報理論の課題
統合情報理論では、クオリアの説明が難しい。
どんなクオリアがどんな脳構造から生まれてくるのか説明しづらい。
それでは、クオリアを研究するために、どんなアイデアが必要なのか?
著者の考えをみよう。
ここで、立ち止まり、クオリアについてあらためて一応説明しておく。
クオリアとは、意識経験の中身そのもののことだ。
・虫歯の時の歯の痛み。あの強烈な痛みそのもののこと。
・美味しいラーメンを食べた時の、あの香りや味。
・いま、目の前にあるたくさんの物たちの色の鮮やかさ。
どれも当たり前すぎて意識しないですよね、普通は。
クオリアという概念を理解すると、その不思議さに驚愕するはず。
クオリア構造と情報構造
情報統合理論を参考に、情報構造というものを利用する。
意識が宿るシステムの部品であるニューロンの状態とニューロン同士のつながり方は、因果関係を表す。その因果関係のネットワークのことを情報構造とする。
そして、著者は、クオリアにも構造があることに注目する。
どうやって構造を定義するのか?
クオリアを他のクオリアとの関係性で定義する。
青のクオリアは、他のさまざまな色のクオリアとの関係性を見てあげればよい。そうすると、青のクオリアの構造が定義できる。
数学による保証もある。
圏論の「米田の補題」は、あるものを特徴づけるのが難しいときには、そのものと他のものとの関係性を見れば同じ結果が得られることを保証してくれる。
どんな構造からどんなクオリアが生まれるのかを研究するためには、クオリア構造と情報構造の関係性を分析するのが有効だろう、というのが著者の方針だ。
私の青のクオリアとあなたの青のクオリアは同じか?
という質問に、最終的には答えられるはずだ、と著者は期待する。
私の青のクオリア、私の脳から生まれる情報構造、あなたの脳から生まれる情報構造、あなたの青クオリアという4つが同じなら、私とあなたの青のクオリアは同じだろう。
より詳しくは、本書を読んでみてほしい。
補足 著者のYouTubeチャンネルがすごい!!
著者は、YouTubeチャンネルも運営している。
いろんな人が登場し、最新の研究情報を話してくれている。
とても刺激的。
関連記事