記事の内容
この記事では、
何故エリーズは語らなかったのか?
という本を紹介します。
森博嗣によるWWシリーズの最新作です。
早速読んだので、ネタバレありで感想をまとめていきます!!
それでは、目次をどうぞ。
エリーズ博士の失踪
リアルとヴァーチャル。
その両方で、エリーズ博士は失踪する。
リアルな世界では、エリーズ博士の遺体が発見される。さらに、遺伝子上同じ個体であるクローンも発見される。そのクローンですら、本当のエリーズ博士の行方を知らなかった。
今回鍵になるのは、エリーズ博士が生み出した何かだ。それは、ヴァーチャル世界が進んだ人々にとって、とても貴重なものだと噂されている。
エリーズ博士の行方を追いつつ、彼女が残した何かを探るグアト。
グアトはついにその正体に気づく。
死と天国 エリーズ博士が残したプログラム
エリーズ博士が残した何か。
それは、ヴァーチャル世界での死を可能にするプログラムだった。つまり、ヴァーチャル世界では、死が貴重なものになっていたのだ。人にとって、死がなければ何かが足りない。その欠乏がヴァーチャル世界には存在したのだ。この欠乏、飢えに気がついたのがエリーズ博士だった。彼女は、ヴァーチャル世界からある存在を消すためのプログラムを長い時間をかけて整備した。存在はあらゆるものとの関係であり、存在を消すには何かとの関係という痕跡ごと消す必要がある。これは、ヴァーチャル世界ではとても難しい作業になる。彼女は、このプログラムの作成と始動に成功した。
そして、そのプログラムをヴァーチャルに居る自分自身に対して実行した。ヴァーチャル上での自殺である。その結果として、エリーズ博士は失踪扱いになった。ここに、なにも事件性はない。
リアルは、神が作った世界だった。ヴァーチャルは、人間が作った世界です。神が用意した恵みと、人間が作った恵みを比較して、こちらに欠けている唯一のものが、人の死なのです。現在のところ、申請をすれば死なせてもらえる、という制度は存在しません。
天国って、何だろうか、とふと思いながら……。 人によっては、ヴァーチャルが天国なのかもしれない。しかし、ヴァーチャルは既にリアルに近づいている。本当の天国を用意する必要がある、と考えた天才がいたのだ。
感想
ヴァーチャル世界での死、これが今作のテーマだった。人にとって死とは何か、改めて考えさせられた。
死とは終わりのことである。人という脳には、終わりが必要なのかもしれない。自分自身、つまり自分の世界の終わり。ずっと考え続けること、存在続けること、これらにまだWWシリーズの人間たちも耐えられない、のかもしれない。ギリギリ、生身の身体が残る世代な彼ら。それなら、最初からヴァーチャルで生まれた存在は、死を望むだろうか?
行き着く先は、死ですらも単なる個人の選択、趣味の問題、という世界だろうか。
明日ちょっと消えてくるね、など。
ロジの変化 子ども
今回面白かったのは、ロジの様子だ。
彼女は子どもが誕生し、子どもの様子をずっと気にしている。
そんな彼女は、もう以前のように、銃を撃ちたくないのだという。人間性を感じさせるような存在を破壊したくない、ということか。
この変化はやや安直な気もするが、森先生からファンへのサービスだろう。ロジの可愛らしさ。
今作では、アクションシーンも描かれる。ますます可愛くなるセリン、相変わらずなペネロペ、この二人の活躍も楽しかった。
気長に新作を待ちたい。
関連記事