記事の内容
この記事では、
ジェリーフィッシュは凍らない
という小説を紹介します。
近年の日本ミステリにおいて、傑作だと評判の作品です。
しかも、そのジャンルは、
「そして誰もいなくなった」
系です。
ある閉鎖空間で、全員が他殺遺体となって発見されてしまうのです。
当然、犯人はどこに消えたのか?
という謎が浮かびます。
ミステリ好きならぜひ読んで欲しい一作です。
ネタバレありで感想をまとめます。
あらすじ ジェリーフィッシュは凍らない
小型飛行船で起こる、連続殺人の驚愕の真相!
21世紀の『そして誰もいなくなった』と好評を博した、第26回鮎川哲也賞受賞作
特殊技術で開発され、航空機の歴史を変えた小型飛行船〈ジェリーフィッシュ〉。その発明者のファイファー教授を中心とした技術開発メンバー6人は、新型ジェリーフィッシュの長距離航行性能の最終確認試験に臨んでいた。ところが航行試験中、閉鎖状況の艇内でメンバーの一人が死体となって発見される。さらに自動航行システムが暴走し、彼らは試験機ごと雪山に閉じ込められてしまう。脱出する術もない中、次々と犠牲者が。21世紀の『そして誰もいなくなった』登場! 第26回鮎川哲也賞受賞作にして精緻に描かれた本格ミステリ。
解説=千街晶之
ネタバレ無し感想
トリックが面白い!
ミステリ好きなら、読む価値あります!!
閉鎖空間で、6人の他殺死体が発見される。
犯人はどうやってこの状況を作り上げたのか?
そのトリックは、シンプルなものでした。
本作のユニークなところは、閉鎖空間がジェリーフィッシュという飛行船であることです。このジェリーフィッシュは、架空の科学技術を用いた飛行船です。そして、このジェリーフィッシュこそ、犯人の動機に大きく関わってきます。
ジェリーフィッシュだということは、移動するということです。
つまり、今回の閉鎖空間は乗り物であり移動します。
これが、今作のトリックの核心に絡みます。
続いて、トリック以外の感想です。
小説として面白いかどうか。
残念ながら、あまり私好みの雰囲気ではありませんでした。
探偵役である刑事二人組がいるのですが、あまりキャラクターに特徴がありません。二人の思考の描写が少なく、自然な人間性が見えてこないのです。
文体の雰囲気、人間描写、ここら辺は好みが分かれるところでしょう。
ネタバレあり感想
さて、今回のトリックを解く答えはシンプルです。
・ジェリーフィッシュは、2機あった。
・全体で6人ではなく、6人+死体1つだった。
・1つの死体と7人目が入れ替わっていた。
2機に分かれてジェリーフィッシュは航行していました。ここに気づかせない描写になっているところが見事!
不時着後、1機の方に全員の死体を設置したのです。
もう一方の機体で、犯人は逃走します。
6人しか居ない、と様々な方法で読者に思い込ませるのです。
トリックに関するヒントはいくつか啓示されるものの、肝心のトリックには気付けないような構造になっています。うまい。
質の高いミステリを求める人には、うってつけの一作です。
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