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鵼の碑【ネタバレ感想】「化け物の幽霊」を解体する

記事の内容

 

ついに発売された鵼の碑

 

 

京極夏彦の百鬼夜行シリーズ。

17年ぶりの新作です。

 

もちろん、私もファンの一人です。

 

高校生の頃に百鬼夜行シリーズに出会いました。

そして、どハマり。

 

続編を今か今かと待っていました。

鵼の碑というタイトルは発表されていたものの、その後の続報がまったくありません。もう発売されないのかな諦めていました。

 

そんな中、2023年に発表された発売決定のニュース。最高に嬉しいニュースでしたよね。

 

そして、ついに発売され、読了しました!!

 

この記事では、私の感想をまとめます。

 

ネタバレが含まれますのでご注意を!!!

 

 

 

 

久しぶり!!懐かしい面々の登場

 

関口くん、木場の旦那、京極堂、榎さん。

 

懐かしい面々が揃い踏みです。

 

とくに、関口、木場、京極堂の登場シーンが多めです。

 

関口、木場は、またまた事件に間接的に巻き込まれていきます。相変わらずですね笑

 

一方、京極堂の方は、例の如く、古文書の調査中です。

調査仲間である築山という男が徐々に事件に関与していき、築山の憑き物を落とすために、京極堂が動くという展開になっています。

 

榎木津の登場シーンは少なめです。彼の描写も相変わらずで懐かしい。

 

 

 

 

今回の事件の特徴

 

今作では、現在進行形の事件が一つも起こりません。

 

シリーズの特徴である猟奇的で超常的な連続殺人事件がないのです。

 

あるのは、数十年前の不可解な謎のみ。複数の残された謎に、登場人物たちが翻弄されていきます。

 

父親の不可解な事故死。

死体消失事件。

殺人の記憶を持つ女性。

 

これらの謎は、とある場所に関係することが分かっていきます。

 

栃木の日光です。

 

そして、ちらつく原子力や放射線というキーワード。

 

戦争や軍が大きく関与していることが明らかになっていきます。

 

謎を追い求めた者たちは、日光に集結することになります。

 

この謎を解く鍵は、妖怪である鵼です。

 

この鵼の特徴、それは、化け物の幽霊というものです。

 

 

 

 

感想

 

さて、ここからは私の個人的な感想です。

 

百鬼夜行シリーズの醍醐味のうち、以下の3点に注目します。

 

・事件そのものの面白さ

・憑き物落としの快楽度

・学問的な問い、テーマ

 

 

 

事件そのものの面白さ

事件そのものの面白さとは、事件の珍しさや新しさ、奇妙さ、犯人の異常さ、などです。ここが過去の百鬼夜行シリーズは凄かった。

 

しかし、今作では現在の事件は起こりません。過去の謎に翻弄されるだけです。そのため、ドラマとして盛り上がる場面がほとんどないのです。

 

読んでも読んでも、大きな出来事が何も起こらない。

 

仄めかされていたあの人にここでつながるのか、などの快楽しかありません。

 

複数の謎があり、それぞれ別々なグループが解明を試みていくのですが、それらがつながる瞬間の快楽もそこまで大きくはないのです。

 

本書では、つながり具合の掲示がわかりやすい方なのです。京極堂が解説するまでもなく、いろいろなことが日光という場所につながっていきます。そのため、伏線がつながる面白さ、という点はいまいちです。

 

総じて、事件そのものの面白さは低めです。

 

 

 

憑き物落としの快楽度

憑き物落としの面白さ、という点はまあまあでした。

 

木場などが描いた事件の全体像を、京極堂は覆します。しかし、この真相が中禅寺だけの視点に都合の良い気がしてしまい、いまいちなるほど!!!感が低かったのです。やや残念。

 

事件の真相にはあの堂島大佐が関わっていたのです。彼自身が事件を描いたわけではありませんが、堂島大佐が属す組織が関わっていました。

 

思いっきりネタバレですが、原爆開発に反対するために、放射線の危険性を示すための実験場が日光のとある場所に造られていたのです。もちろん、トップシークレットです。だから、この秘密に関わってしまった人たちの人生に、説明できない穴を残してしまったのです。その穴に、現在の関係者たちは翻弄されていました。

 

やや物足りないのは、民俗学的な整理要素が少なかったことです。

 

あるにはあるのですが、事件のメインとは離れてしまい、大きなものではありません。

 

狂骨の夢や、鉄鼠の檻のようなスケールの大きな民俗学的な仕掛けが無かったのは残念です。

 

憑き物落とし全体の軸にある、化け物の幽霊の解体というテーマ。このテーマの使い方そのものは鮮やかでした!!

 

それに、最後の最後に、どうやら百物語シリーズのキャラと繋がりある人物たちの存在が明らかになります。ここら辺は読み応えありました!!

 

 

 

 

学問的な問い、テーマ

今作で登場する抽象的なテーマをいくつか紹介します。

 

・存在と名づけ

・信仰

 

名前をつけた後に、存在が規定される。鵼の正体にも関わります。

 

さまざまある信仰対象の本質とはなんだろう。学僧である築山がこの謎にとらわれます。今作でいえば、山という存在そのもののあり方にこそ人は信仰心を持つのだ、という解きほぐしが面白かったです。山という場所、存在がずっと持っていた力に注目している点が好みです。

 

こうしたテーマに対する京極堂の講釈はやはり見事。とても楽しい語りでした。

 

 

 

 

次回作も決定

全体的な感想として、邪魅の雫や陰摩羅鬼の瑕よりは好きだが、初期シリーズの方が好き、という感想です。

 

まあ、初期シリーズが傑作すぎますよね。このハードルを越えるのは難しい。

長期間に及ぶシリーズですので、作者が描きたい方向と、読者が望む方向にズレがあるのかもしれません。

 

あくまでも私個人の感想です。

 

 

次回作も決定しています。

幽谷響の家というタイトルです。

 

気長に待ちましょう!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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