記事の内容
ついつい、私たちヒトは特別な生物だと思ってしまう。
しかし、私たちヒトは特別ではない。
25種ほどもいた人類の、最後の種なのだ。
では、人類の中で、なぜヒト(ホモサピエンス)だけが生き残ったのだろう?
今回は、人類史を魅力的に紹介してくれる本を紹介したい。
『絶滅の人類史』という本だ。
絶滅の人類史 なぜ「私たち」が生き延びたのか
ホモ・サピエンスがネアンデルタール人を殺した?
初期人類の謎から他の人類との交雑まで。人類史研究の最前線をエキサイティングに描く!700万年に及ぶ人類史は、ホモ・サピエンス以外のすべての人類にとって絶滅の歴史に他ならない。彼らは決して「優れていなかった」わけではない。むしろ「弱者」たる私たちが、彼らのいいとこ取りをしながら生き延びたのだ。常識を覆す人類史研究の最前線を、エキサイティングに描き出した一冊。
直立二足歩行、肉食、暇
直立二足歩行なら、食料を手で運んで子を育てることがしやすくなる。
しかし、走るのは遅くなる。どうやって、肉食獣から身を守ったのだろう?
多く食べられてしまうのは避けられない。
だから、たくさん産むことで、人類は生き残った。
実際に、チンパンジーなどの霊長類よりも、
人の方が子どもをたくさん産むことができる。
人類は、肉食獣たちに襲われまくっていたのだ。
子をたくさん産むことができる、という適応ができた種は生き残れる可能性が高かったのだろう。
人類の特徴である、脳を考えよう。
脳は燃費が悪い。
だから、効率よくエネルギーをとれる種だけが、脳を発達させることができる。石器を作るようになり、肉を取りやすくなったおかげで、脳が大きくなった。
草食よりも肉食の方が、消化の時間が少なくて済む。それなら、その分のエネルギーを脳に回すことができる。
直立二足歩行は、持久力が強いという利点もある。
さらに、火の使用も始まった。食物摂取の大幅な効率化につながり、人類を暇にした。暇のおかげで、大きくなった脳をよりコミュニケーションに使い始めた。
人類は群れをつくった。群れの維持には、複雑なコミュニケーションが必要になる。さらに脳が発達した。
なぜ他の人類は滅び、わたしたちホモサピエンスは生き残ったのか?
約4万年ほど前に、ネアンデルタール人は絶滅した。
なぜネアンデルタール人は滅び、わたしたちホモサピエンスは生き残ったのか?
わたしたちホモサピエンスの方が賢かったからだと考えたくなる。
しかし、それだけが原因とはいえない。
(脳の大きさだけなら、ネアンデルタール人の方が大きい)
では、わたしたちホモサピエンスが他の人類を虐殺したからだろうか?
これも、違うと考えられている。
ホモサピエンスで大きな戦闘が見られたのは、1万年前ほどの農耕が始まった時期からだ。そのときには、すでにほかの人類は滅んでいた。
著者は、次のように考える。
現代、人類が増えすぎたせいで、他の生物がどんどん絶命している。
同じように、ホモサピエンスが増えた結果、地球は有限なのだからネアンデルタール人は滅びるしかなかった。
「同じ生態的地位を占める2種は、同じ場所に共存できない」
何らかの理由で、ホモサピエンスは子どもを多く残せた。
その結果、ホモサピエンスの方がネアンデルタール人よりも増えた。
生物のバランスの問題により、ネアンデルタール人は徐々に絶滅へと向かっていった。
私たち人類が特別なわけではない。
数万年後、わたしたちホモサピエンスはどうなっているのだろうか、と著者はしめくくる。
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