記事の内容
とにかく、「男と女の違い」というテーマは冷静な議論が難しい。ツイッターなどのSNSでは、つねに、男女差別に関しての話題が飛び交っている。
その中には、まともな意見もあれば、単なる個人的な不満まである。
そうした情報を冷静にさばくためにも、まずはなにを押さえればいいのだろうか?みなさんなら、何を議論の出発点にすべきだと思うか?
「女と男は生物学的に異なる」という事実だと思う。この違いをはっきり認めるべきだ。
それでは、「生物学的に異なる」とは、具体的にはどういうことなのか?
その具体例を科学的研究は明らかにしてきた。
今回は、それら知見を得るのにちょうどいい本を紹介したい。
『女と男 なぜわかりあえないのか』という本だ。
女と男 なぜわかりあえないのか 橘玲
ベストセラー『言ってはいけいない』の著者が、男女のタブーに斬りこむ!
「週刊文春」の人気連載「臆病者のための楽しい人生100年計画」を新書化。「女と男」は人類の最大の関心事ともいえる。この永遠のテーマが最新のサイエンスによって解明されつつある。野心的なタブーの挑戦のなかから、意外かつ誰でも楽しんで読める最前線の研究を紹介。果たして女と男の戦略のちがいとは……。
【本書の内容より】
●「美女はいじわる」は本当だった!?
●男は52秒にいちど性的なことを考える
●女は純愛、男は乱婚?
●女の8割は「感情的な浮気」に傷つく
●男のテストステロン・レベルは女の100倍
●女は合理的にリスクをとる
●父親の10人に1人は知らずに他人の子を育てている
●女は身体が感じても脳は感じない
●男は「競争する性」、女は「選択する性」
この本は、扱っている内容のせいで、男女差別を助長するようなものとして扱われてしまうかもしれない。だからこそ、本書の「はじめに」にて、著者の意見が示されている。
「男女平等でなければならない」という政治的な正しさに対しての著者の意見はこうだ。
男と女は生物学的にちがっているが、平等の権利を持っている。
多様性を無視し、「同じ」でなければ人権は与えられないという考え方が差別的なのだ。
差別と区別のちがいをよくよく吟味してみてほしい。
そして、本書で繰り返し現れるフレーズがある。
「どんなに不愉快に感じるとしても、それは事実なのだ。科学で冷静に調べた結果、現在もっとも説得力のある事実なのだ」
価値観と事実を切り離し、ぜひ客観的な目でこの現実を見てみてほしい。そうすれば、本書の知見を日常生活に生かしていけるはずだ。
つづいて、本書のなかから気になったものをピックアップしたい。
気持ちが冷める理由
人類の歴史の大半で避妊法などなかったから、恋におちた男女はすぐにセックスして、1年もすれば子どもが生まれただろう。そのときになっても「狂おしい恋の嵐」に翻弄されていたら、子育てなどできるはずはない。恋の情熱は半年程度で冷めるように「設計」されているのだ。
「恋愛の感情」が長くは続かない理由も、私たちの心がどのようにデザインされているのかを考えれば、とても自然である。遺伝子を残すために都合がいいように、心が発達したのだ。
「生存に適さない遺伝的形質が淘汰され消えていった結果、有利な遺伝子が残った」という最強にシンプルな原則が進化論だ。進化によって心がデザインされていったという進化心理学において、この原理原則こそが最大のポイントだ。本書のような進化に関する説を理解するならば、絶対に押さえておいてほしい。
まとめ
本書をよむと、女と男は生物学的に違うということがよくわかると思う。
ただし、どのように違うのかについては、冷静な分析が必要だ。だいたいは日常的な感覚に近い事実が見つかるが、中には直感とずれるものもある。
「女と男は生物学的に違う。だから、○○だ」
この○○に何をあてはめるかで、正しい意見にも、ひどく差別的な意見にもなってしまう。だからこそ、「平等」ということの意味をより明確にしていくべきだと思う。
個人はみな違うが、平等であるべきだ。
女と男は違うが、平等であるべきだ。
この意見は正しいように見える。
しかし、ここでいう「平等」とはどういうことなのだろう。
違う、異なるということを前提に、そこに「平等」をもちこむ。それは、もっと具体的にいうならばどういうことなのか?
いじめが大好き、差別が大好きな脳を持つ我々人類にとって、「平等」ということの実践は儚いものなのかもしれない。(いじめ好き、差別好きな性質をもつ個体が生き残るのに有利だったのだ。そして、その子孫が現在の私たちだ)
しかし、真の平等をめざして、今まさに世界は進歩しようとしている。そのためにも、この本のような世界についての事実を抑えるべきだと思う。
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